犬が足をしきりになめていたり、顔をこすりつけていたりすると心配になるものです。
そんなときに動物病院で処方されることが多いのが、ステロイドの塗り薬です。
「ステロイドが入っているのに、愛犬に塗り薬を使い続けて大丈夫なのか」
という飼い主様も多いでしょう。
じつはステロイドの塗り薬は、正しく使えば犬のかゆみを抑えてくれる有効な治療法です。
この記事では犬のかゆみに対するステロイドの塗り薬の有効性と使用時の注意点について解説します。
最後まで読んでいただくことでステロイド外用薬を正しく使い、愛犬の皮膚の健康を守ってあげましょう。
犬のかゆみにはステロイドの塗り薬が有効
犬のかゆみに対してステロイドの塗り薬は有効な手段です。
ステロイドの塗り薬のメリットは以下の3つです。
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部分的なかゆみに使いやすい
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全身への影響が比較的少ない
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費用が安い
部分的なかゆみに使いやすい
部分的なかゆみに使いやすいことはステロイドの塗り薬の大きなメリットです。
限られた部位だけがかゆいときは、愛犬に全身に効く薬を飲ませることに抵抗がある方も多いでしょう。
そんなときに部分的に塗り薬を塗るだけでかゆみを抑えられるなら安心ですよね。
全身への影響が比較的少ない
全身への影響が比較的少ないのはステロイドの塗り薬のメリットです。
ステロイドの塗り薬は飲み薬のステロイドと違い、体全体に副作用を起こしにくいです。
ただし広範囲に塗ると吸収量が多くなるため、あくまで体の一部にとどめましょう。
ステロイドの副作用についてはこちらをチェックしてみてください。
犬のかゆみ止めにステロイドは必要?|ステロイドを使う前に知っておきたいこと
費用が安い
費用が安いこともステロイドの塗り薬のメリットのひとつです。
かゆみ止めとして安全性の高い飲み薬や注射薬は比較的費用がかかります。
部分的なかゆみを飲み薬を使わずに塗り薬で抑えられれば、費用も抑えることが出来ます。
ステロイドの塗り薬の注意点
ステロイドの塗り薬は有効な治療法ですが、使い方には注意が必要です。
以下の注意点を守ることで、ステロイドの塗り薬を安全かつ効果的に使いましょう。
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細菌が増えているときは効果が出にくい
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塗り続けるとステロイド皮膚症になる
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塗ってから20分間はなめさせない
細菌が増えているときは効果が出にくい
皮膚に細菌が増えている場合はステロイドの塗り薬の効果が出にくいです。
細菌が皮膚で増えると膿皮症という皮膚病になり、かゆみや赤みが出ます。
じつはブドウ球菌はステロイドを使うと逆に増殖しやすくなり、悪化することがあります。
このため動物病院で愛犬の皮膚が膿皮症になっていないか診断してもらうことが大切です。
塗り続けるとステロイド皮膚症になる
ステロイドの塗り薬は犬の皮膚に塗り続けるとステロイド皮膚症を起こすことがあります。
ステロイドを皮膚に塗り続けると、皮膚は薄くなりフケが増えます。
これをステロイド皮膚症と呼び、治るのに時間がかかることも多いです。
塗ってから20分間はなめさせない
ステロイドの塗り薬は塗ってから20分間は犬になめさせないようにしましょう。
薬を塗ってからすぐに犬がなめてしまうと、皮膚に浸透しないため効果を発揮できません。
薬を塗ってから散歩をしたり、遊んだりするなど犬の気をそらせてあげるとよいでしょう。
獣医師に効果を判定してもらうことが大切
犬にステロイドの塗り薬を使うときは、獣医師に効果や有害事象を判定してもらうことが大切です。
やみくもに何ヶ月も薬を塗り続けると、膿皮症やステロイド皮膚症が起きてしまいます。
塗り薬によって犬の皮膚に改善があれば、使用頻度を減らすことも大切です。
また改善がない場合は獣医師の判断のもとで使用を中止し、治療を再検討してもらう必要があります。
犬の皮膚のかゆみを抑えるケア
ステロイドの塗り薬は皮膚のかゆみを抑えるために有効ですが、再発を防ぐためには日常的なケアも重要です。
以下の自宅でできる皮膚ケアも取り入れてみてください。
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腸活
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エリスリトール
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適切なシャンプー
腸活
腸活は腸内細菌叢を整えることで過剰な免疫反応を抑える体質改善のためのケアです。
とくに犬アトピー性皮膚炎の犬では免疫が環境アレルゲンに過剰反応して、体のかゆみが起きます。
腸活をすることで腸内細菌が改善すると、犬アトピー性皮膚炎の犬のかゆみが改善することが報告されています。
腸活には生きた善玉菌を取り入れるプロバイオティクスや、善玉菌の成分を取り入れるバイオジェニックスなどが有用です。
腸活についてはこちらも読んでみてください。
犬の皮膚の健康によいバイオジェニックスとは
エリスリトール
エリスリトールは糖アルコールの一種で、皮膚の細菌バランスを整える作用があります。
犬の体がかゆくなる場合はブドウ球菌やマラセチアが皮膚に増殖していることが多いです。
エリスリトールはこれらの菌の繁殖を抑えてくれるため、皮膚のかゆみのコントロールに有用です。
エリスリトールについてはこちらも読んでみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
適切なシャンプー
適切なシャンプーは皮膚の汚れや余分な皮脂を除去する効果があります。
とくに足先などの体の中でもかゆくなりやすい部分は、皮脂や汚れがたまりやすいです。
このため定期的に洗浄をして清潔に保つことで、ブドウ球菌やマラセチアの増殖を抑えることが大切です。
適切なシャンプーの頻度についてはこちらをチェックしてみてください。
犬のシャンプーのやりすぎは逆効果?|犬の正しいシャンプーを獣医師が解説
まとめ
ステロイドの塗り薬は犬の皮膚のかゆみの局所治療として効率がよく、全身投与よりも体への影響が少ないです。一方で長期間にわたりステロイドの塗り薬を使用すると、ステロイド皮膚症が起きる可能性もあります。
このため獣医師に診察してもらいながら、塗り薬の使用量や頻度を調整してもらうことが大切です。
今回の記事を参考に正しくステロイドの塗り薬を使い、愛犬の皮膚の健康に役立ててみてください。
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。

