犬のかゆみ止めにステロイドは必要?|ステロイドを使う前に知っておきたいこと
犬がかゆみで体を掻きむしる姿は飼い主様にとって辛いものです。
ステロイドは即効性のあるかゆみ止めとして、広く使われていますが、
「ステロイドは副作用が心配」
「ステロイドの長期使用に不安」
という飼い主様も多いのではないでしょうか。
この記事ではかゆみ止めとしてのステロイドについて解説し、ステロイドだけに頼らない犬のかゆみ対策をお伝えします。
犬の皮膚トラブルにお悩みの方は、ぜひ最後までお読みいただき、犬の皮膚を健康に保ちましょう。
ステロイドが犬のかゆみ止めに使われる理由
ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬です。
また、ステロイドは過剰な免疫反応を抑える効果もあるため、アレルギー反応によるかゆみを軽減します。
犬の場合は犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎で使用されることが多いですね。
このように、ステロイドは即効性が高く、犬のかゆみ止めとして頻繁に利用されています。
その一方で、ステロイドは長期的な使用による副作用も懸念されています。
ステロイドのリスクと副作用
ステロイドは非常に有効な薬ですが、その使用には以下のようなリスクがあります。
-
尿の量が増える:尿の量が増加し、喉が渇きやすくなります。
-
食欲が増す:食欲が増し、肥満につながります。
-
感染症にかかりやすくなる:免疫系を抑制するため、感染症にかかりやすくなります。
-
肝臓に負担がかかる:ステロイドが肝臓に作用し、肝障害を起こすことがあります。
さらに、ステロイドの長期使用により、体内のホルモンバランスが崩れることもあります。
ステロイドで皮膚トラブルが起こることも?
ステロイドは外用薬として皮膚病の治療に使われることが多いですが、長期使用や過剰使用が原因で、逆に皮膚の状態が悪化することもあります。
外用ステロイドが原因の皮膚トラブルをステロイド皮膚症と言いますね。
ステロイド皮膚症では皮膚が薄くなり、乾燥しやすくなります。
その結果、皮膚のバリア機能が低下し、細菌や真菌による感染症にもかかりやすくなるので注意しましょう。
外用ステロイドを使用する際は愛犬の健康状態を常に観察し、異常が見られた場合はすみやかに獣医師に相談することが大切です。
ステロイドに頼らずに犬のかゆみを軽減する方法
ここまで解説したようにステロイドは犬のかゆみ止めとして優秀な薬ですが、使用の際は慎重なモニタリングが必要です。
飼い主様の中には
「愛犬にできるだけステロイドを使いたくない」
という方もいると思います。
そんな飼い主様のために、ここではステロイドの使用量を抑えるための具体的な方法をご紹介します。
代替薬の使用
犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎ではステロイド以外にも、かゆみを抑える目的で、分子標的薬や抗体医薬などを使うことがあります。
これらの薬はステロイドに比べ、長期使用した際の副作用が少なく、長期管理が必要なアレルギー性皮膚炎に有効です。
しかし、どの薬にもメリット・デメリットがあるので使用の際は獣医師とよく相談しましょう。
スキンケアの強化
犬の皮膚を健康に保つためにはスキンケアも大切です。
定期的に抗炎症成分を含むシャンプーを行うことで、皮膚の状態を改善し、かゆみを抑えることができます。
また、皮膚のバリア機能を強化するには保湿も重要です。
乾燥した皮膚はかゆみを引き起こしやすいため、保湿を行うことで症状を軽減できます。
犬の保湿に関しては以下の記事をチェックしてみてください。
犬に保湿は必要?|皮膚トラブルを防ぐ正しい保湿ケアとは
生活環境の整備
アレルギー性皮膚炎の場合は、犬がアレルギー反応を示す花粉やダニなどを避けることもかゆみ対策に有効です。
こまめな掃除を心がけ、環境を清潔に保つことでアレルゲンを減らすことができます。
また、ストレスはかゆみを悪化させることもあるため、犬のストレスを軽減することも大切です。
愛犬がリラックスできる環境を整えてあげましょう。
腸活
腸活は皮膚の健康維持に有効と注目されています。
腸活を行い、腸内の善玉菌を増やすことで免疫のバランスを整えることができます。
犬で腸活を実施する際はプロバイオティクスやプレバイオティクスを含むサプリメントを摂取することがおすすめです。
腸活に関しては以下の記事をチェックしてみてください。
犬の腸活完全攻略ガイド|腸と皮膚の意外な関係とは
ステロイドが必要な場合に知っておきたいこと
犬の皮膚病の治療でステロイドを使用する必要がある場合は使用方法についてしっかりと理解しておくことが重要です。
ステロイドは短期間で集中的に使用することで副作用のリスクを最小限に抑えられます。
長期にわたりステロイドを使用しなければならないときは定期的に獣医師のチェックを受け、副作用が出ていないかを確認しましょう。
また、ステロイドを突然中止すると体調を崩すことがあるので、投薬をやめるケースでも獣医師の指導のもとゆっくりと減らすことが大切です。
まとめ
いかがでしたか。
ステロイドは犬のかゆみを迅速に抑えることができる薬ですが、その使用には注意が必要です。ステロイドに依存しすぎず、他の治療法や生活改善を試みることで、犬の生活の質を向上させることができます。
日々のケアや生活環境の見直しを通じて、愛犬にとって最善のかゆみ対策を見つけてください。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。