犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
犬の皮膚トラブルにお悩みの飼い主様は多いのではないでしょうか。
犬の皮膚は人間と比較して薄く、外部からの刺激を受けやすいという特徴があります。
そのため、犬の皮膚の健康を守るためには日常的なスキンケアが不可欠です。
近年、糖アルコール成分であるエリスリトールが犬の皮膚の健康維持に注目されています。
今回の記事では犬の皮膚の健康維持に役立つエリスリトールについて詳しく解説します。
犬のスキンケアにお悩みの飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、皮膚の健康を守りましょう。
エリスリトールとは
エリスリトールは糖アルコールの一種で、人の口腔ケアに使われるキシリトールの仲間です。
キシリトールは犬では中毒を起こすため使用できませんが、エリスリトールは犬でも安全性が高いとされています。
エリスリトールはブドウや梨などの果物、キノコなどの食材にも含まれています。
エリスリトールは甘味が砂糖に非常に近いにも関わらず、カロリーが非常に低いので、いろいろな食品の低カロリー化に利用されていますね。
また、エリスリトールは皮膚の悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌の増殖を促進することで細菌叢のバランスを整える効果があります。
人では体臭やニキビの改善に効果があるとされ、化粧品などにエリスリトールが含まれていることが多いです。
最近では、エリスリトールが犬の皮膚の健康管理にも役立つのではないかと注目されています。
エリスリトールの犬の皮膚への作用
エリスリトールは犬の皮膚の健康に対して多面的な効果を持つプレバイオティクスとして期待されています。
ここではエリスリトールのおもな作用をご紹介します。
病原菌の増殖抑制
エリスリトールは、犬の膿皮症などの原因菌であるブドウ球菌に対して静菌作用を示します。
静菌作用とは病原菌の増殖を抑えたり、阻止することを指します。
また、エリスリトールはメチシリン耐性ブドウ球菌のような抗生剤に耐性を持つ菌に対しても効果的です。
皮膚バリア機能の改善
皮膚のバリア機能は、外部からの異物の侵入を防ぎ、皮膚の水分を保持する上で非常に重要です。
エリスリトールは皮膚の細菌叢のバランスを改善する作用もあります。
皮膚にはさまざまな種類の常在菌が生息しており、これらの細菌のバランスが保たれていることで、皮膚のバリア機能が正常に働きます。
エリスリトールは病原菌の増殖を抑え、善玉菌が優勢な状態を保つことで皮膚を健やかに保つことができます。
エリスリトールはどんな症状におすすめ?
ここまで、エリスリトールの作用を解説してきましたが、
「どのような症状の時に使えばいいの?」
と疑問を持つ飼い主様も多いと思います。
エリスリトールはおもに膿皮症などの細菌感染による皮膚トラブルに使用されています。
エリスリトールは、犬の皮膚感染症に関連するブドウ球菌に対して効果を示し、これらの細菌の成長を抑制することが確認されています。
エリスリトールを使用するメリット
エリスリトールを皮膚の細菌感染の治療に取り入れることには、
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耐性菌の出現を抑制できる
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皮膚の細菌叢のバランスを崩さない
などのメリットがあります。
ここではそれぞれのメリットについて詳しく解説します。
耐性菌の出現を抑制
膿皮症などの皮膚感染症は従来、抗生物質による治療が一般的に行われてきました。
しかし、最近では抗生物質の過剰使用の影響で耐性菌が増加し、治療の選択肢が限られることが懸念されています。
エリスリトールの使用により、従来の抗生物質に依存せずに感染症を管理できる可能性があります。
皮膚の細菌叢のバランスを崩さない
抗生物質による皮膚感染症の治療では、病原菌だけでなく、皮膚の正常な細菌叢にも影響することがあります。
細菌叢のバランスが乱れることで皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対しての防御機構が弱くなってしまいます。
エリスリトールは細菌叢のバランスを保ちながら、病原菌の増殖を抑えることが可能です。
その結果、皮膚のバリア機能を低下させることなく、感染症に対処することができます。
スキンケアにエリスリトールを取り入れるには
エリスリトールを犬のスキンケアに取り入れるにはスプレーなどの外用製品が一般的です。
エリスリトールによるスキンケアを行うことで、皮膚の健康を保ちながら、抗菌効果を得ることができます。
これにより、感染症のリスクを低減することが期待できますね。
エリスリトールは一般的に安全とされていますが、使用後に皮膚の赤みやかゆみが見られた場合は、すぐに使用を中止し、獣医師に相談することが推奨されます。
特に、初めて使用する場合は、少量を試して反応を確認することが望ましいです。
まとめ
皮膚トラブルを抱える犬にとってエリスリトールの活用は悩みの解決につながる可能性があります。
エリスリトールは病原菌の増殖抑制、皮膚バリア機能の改善など多面的な効果があり、犬アトピー性皮膚炎や表在性膿皮症などの皮膚疾患に対して用いることができます。
日々のスキンケアにエリスリトールを取り入れることで、愛犬の皮膚を健康的に保ちましょう。
記事監修者
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。