ミニチュアシュナウザーは、特徴的な口ひげと眉毛のような毛並みが魅力の人気犬種です。
賢くて人懐っこく、家庭犬として長く愛されてきました。
そんなミニチュアシュナウザーですが、皮膚病になりやすい傾向があります。
今回は、ミニチュアシュナウザーに多い皮膚病について獣医師の視点で解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、愛犬の皮膚の健康を守るヒントにしてください。
ミニチュアシュナウザーの特徴
ミニチュアシュナウザーの特徴は、密なダブルコートとしっかりした骨格です。
外側の硬い毛と内側の柔らかい毛で、寒さや外部の刺激から皮膚を守っています。
しかし、この密な被毛は通気性が悪く、皮膚が蒸れやすいという一面もあります。
皮脂や汗の分泌が多めな子もおり、皮膚の常在菌が過剰に繁殖しやすい環境になりやすいです。
またミニチュアシュナウザーは皮膚バリアが弱いことが多く、外部刺激に敏感です。
こうした体質が複数の皮膚病の発症につながります。
ミニチュアシュナウザーによくある皮膚病
ミニチュアシュナウザーによくある皮膚病として以下の3つを解説します。
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膿皮症
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犬アトピー性皮膚炎
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季節性側腹部脱毛症
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
膿皮症
膿皮症は皮膚に常在するブドウ球菌が過剰に増えて起こる細菌感染症です。
赤みやブツブツした発疹が見られ、犬がかきむしるとかさぶたや脱毛も起こります。
とくにミニチュアシュナウザーでは、以下の皮膚疾患を背景に膿皮症が起こりやすいです。
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甲状腺機能低下症
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シュナウザーコメド
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犬アトピー性皮膚炎
それぞれについて説明します。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は膿皮症を二次的に引き起こしやすい病気です。
ミニチュアシュナウザーはこの甲状腺機能低下症の好発犬種のひとつです。
甲状腺機能低下症になると皮膚の代謝が低下して皮膚のバリアが弱くなるため、膿皮症を繰り返すことがあります。
シュナウザーコメド
シュナウザーコメドは膿皮症の誘因ともなるシュナウザー特有の皮膚病です。
シュナウザー面皰症候群とも呼ばれ、背中に黒い角栓や吹き出物のような病変ができます。
このシュナウザーコメドに二次的に皮膚の常在菌が増殖すると膿皮症になります。
予防には皮膚の清潔を保つことと、日ごろからのスキンケアが必要です。
犬アトピー性皮膚炎
犬アトピー性皮膚炎は環境中のアレルゲンに反応して、かゆみや炎症が出る病気です。
ミニチュアシュナウザーは犬アトピー性皮膚炎の好発犬種のひとつです。
アトピーを発症している犬は皮膚バリアが弱いため、細菌が増えやすくなり膿皮症を併発することも珍しくありません。
治療はかゆみ止めの薬に加えて、保湿や腸活などで皮膚の抵抗力を高めることが有効です。
季節性側腹部脱毛症
季節性側腹部脱毛症はお腹の横(側腹部)の毛が左右対称に抜ける病気です。
ミニチュアシュナウザーはこの病気の好発犬種であり、冬に発症することが多いです。
日照時間の変化が脱毛の原因と言われていますが、十分には解明されていません。
かゆみや炎症はほとんどなく、数か月すると自然に毛が生えてくることがほとんどです。
症状は見た目の変化だけですが、皮膚が露出して乾燥や外部刺激を受けやすくなります。
ミニチュアシュナウザーの皮膚にできるおうちケア
ミニチュアシュナウザーの皮膚病の健康管理には日常のケアが欠かせません。
ご家庭で取り入れやすい方法は以下の3つです。
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エリスリトールを含んだ保湿剤
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定期的なシャンプー
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腸活
それぞれについて解説します。
エリスリトールを含んだ保湿剤
エリスリトールを含む保湿剤は、ミニチュアシュナウザーの皮膚ケアに有効です。
保湿をするだけでも皮膚の健康のためには有効ですが、エリスリトールを含んだものを使用するとより効果的です。
エリスリトールは皮膚常在菌のバランスを整え、ブドウ球菌の過剰増殖を抑えてくれます。
ミニチュアシュナウザーは甲状腺機能低下症などの原因で膿皮症を起こしやすいため、エリスリトールを含む保湿剤は有効だと言えます。
エリスリトールについてはこちらにまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
定期的なシャンプー
定期的なシャンプーはミニチュアシュナウザーの皮膚ケアに有効です。
普段は保湿成分入りの低刺激シャンプーを使うことがオススメです。
シャンプー後に保湿剤を使うと乾燥しにくく、被毛がふわっとした仕上がりになります。
実際に膿皮症になっている場合や皮脂の分泌がとても多い場合は、薬用シャンプーを使って頻繁に洗うこともあります。
具体的なシャンプーの種類や頻度は獣医師に診察してもらったうえで相談しましょう。
シャンプーの仕方についてはこちらもチェックしてみてください。
犬のシャンプーのやりすぎは逆効果?|犬の正しいシャンプーを獣医師が解説
腸活
腸活はミニチュアシュナウザーの皮膚ケアに有効です。
じつは腸内細菌の乱れが、アレルギー性の皮膚炎と関係していることがわかっています。
腸内に悪玉菌が増えると免疫のバランスが崩れ、アレルギーが起きやすいです。
ミニチュアシュナウザーでは犬アトピー性皮膚炎もよくみられるため、腸活で対策することが重要です。
腸活を行う際にはサプリメントを使用すると効率が良いです。
ただ腸活の効果が出るには、少なくとも効果が出るのに3ヶ月程度はかかります。
腸活についてはこちらをチェックしてみてください。
犬の腸活完全攻略ガイド|腸と皮膚の意外な関係とは
まとめ
ミニチュアシュナウザーは膿皮症をはじめ、さまざまな皮膚病にかかりやすい犬種です。
ただの膿皮症と思ったら、背景には甲状腺機能低下症やシュナウザーコメド、アトピーせ皮膚炎が隠れていることがあります。
愛犬の皮膚を健康に保ち快適な毎日を送るために、今日から少しずつ始めてみましょう。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。