ラブラドール・レトリーバーは温厚で人懐っこく、家庭犬としても人気の高い犬種です。
そんなラブラドール・レトリーバーですが、皮膚のトラブルがとても多い犬でもあります。
「うちのラブラドールはよく耳や手がかゆくなる」
このような飼い主様も多いのではないでしょうか。
この記事ではラブラドール・レトリーバーに多い皮膚病とおうちでできる皮膚ケアについてわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚ケアに役立ててください。
ラブラドール・レトリーバーの特徴
ラブラドール・レトリーバーは水中で活躍する猟犬をルーツにもつ犬種です。
そのため被毛が水を弾きやすいように皮脂の分泌が多いという特徴があります。
皮脂は本来は皮膚を守るバリアですが、過剰になるとかゆみの原因になることもあります。
またラブラドール・レトリーバーの手先は泳ぎやすいように水かきが発達していますね。
このため指の間に皮脂がたまりやすく、かゆみを引き起こすことがあります。
ラブラドール・レトリーバーは被毛にも特徴があり、密なダブルコートになっています。
このため被毛の下に湿気がこもりやすく、皮膚が蒸れやすいです。
細菌やマラセチアなどの常在菌は高温多湿な環境で増えやすく、皮膚炎を悪化させます。
さらにラブラドール・レトリーバーはアレルギー体質をもっていることが多いです。
このため犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーによって皮膚のかゆみが起きることがあります。
ラブラドールレトリーバーに多い皮膚病
ラブラドールレトリーバーに多い皮膚病には、次のようなものがあります。
-
犬アトピー性皮膚炎
-
食物アレルギー
-
外耳炎
それぞれについて詳しく説明します。
犬アトピー性皮膚炎
犬アトピー性皮膚炎はラブラドール・レトリーバーで頻繁に見られます。
犬アトピー性皮膚炎は環境中のアレルゲンに反応してかゆみや皮膚炎を起こす病気です。
とくにダニなどのハウスダストや花粉、カビなどが原因になることが多いです。
この皮膚病は以下のような犬の体の部位にかゆみや皮膚炎をおこします。
-
顔
-
耳
-
脇
-
腹部
-
足先
これらの体の部位に左右対称に皮膚炎が見られたら、犬アトピー性皮膚炎を疑います。
また犬アトピー性皮膚炎に続発して、ブドウ球菌やマラセチアが増殖することによって皮膚炎を悪化させることもあります。
また激しいかゆみがなくても、体のフケが多いという症状だけが見られることもあります。
食物アレルギー
食物アレルギーはラブラドール・レトリーバーに多い皮膚病のひとつです。
この病気は食べ物に含まれるタンパク質が原因で起こるアレルギー性皮膚炎です。
牛肉や鶏肉、小麦、乳製品などがアレルゲンになりやすいとされています。
かゆみの起こる場所はアトピーと似ていますが、下痢や軟便を伴うこともあります。
外耳炎
外耳炎はラブラドール・レトリーバーでよく見られます。
犬が耳をかいたり頭を振ったり、耳から独特のにおいがする場合は外耳炎のサインです。
ラブラドール・レトリーバーは耳が垂れて通気性が悪く、耳垢の分泌も多いです。
このため耳道内でマラセチアなどの常在菌が増殖してかゆみを起こしやすいです。
また犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが原因で外耳炎になることも多く、耳の構造だけはなく体質も考慮する必要があります。
外耳炎がひどいと、耳を激しく振った衝撃で耳が内出血して耳血腫になることもあります。
耳血腫は犬の耳がパンパンに腫れて、強い痛みが伴うことが特徴です。
耳血腫は早めに治療しないと、治ってからも耳が変形してしまうことがあります。
このため愛犬の耳のかゆみに気が付いたら早めに動物病院で診てもらうことが大切です。
ラブラドールレトリーバーの皮膚病におうちでできること
ラブラドール・レトリーバーの皮膚病ではおうちでのケアも重要です。
獣医師による治療を受けた上で、以下のようなケアも実践するとよいでしょう。
-
腸活
-
アレルゲンへの対策
-
保湿
腸活
腸活はラブラドール・レトリーバーの皮膚ケアにおいて重要です。
腸活により腸内細菌が整うと、アレルギー反応が起きにくくなることが知られています。
乳酸菌やオリゴ糖を含むサプリメントを3ヶ月以上続けて与えると、皮膚の状態が少しずつ良くなることがあります。
腸活についてはこちらをチェックしてみてください。
アレルゲンへの対策
ラブラドール・レトリーバーは犬アトピー性皮膚炎が多く、環境アレルゲン対策が重要です。
具体的には次のような環境アレルゲン対策が効果的です。
-
散歩後の体のふきとり
-
空気清浄機の使用
-
布製品の定期的な洗濯・天日干し
散歩の際には環境中のアレルゲンが顔や体に付着するため体のふき取りが大切です。
また室内については空気清浄機の使用や、ソファなどの布製品に存在するダニ対策としてカバーの洗浄や天日干しが重要になります。
保湿
保湿はラブラドール・レトリーバーの皮膚病対策として重要です。
アレルギー体質の犬は皮膚が乾燥しやすく、保湿により皮膚バリアを補うことが重要です。
1日2回以上の頻度で毛の流れに沿って保湿剤をやさしくなじませるとよいでしょう。
保湿についてはこちらをチェックしてみてください。
犬のアトピー性皮膚炎には保湿スプレーが効果的?|保湿スプレーの正しい使い方
まとめ
ラブラドールレトリーバーはアレルギー体質を持ちやすく、皮膚病が多い犬種です。水中で猟犬として活躍したルーツを持つことから、水を弾く皮脂が多いことも皮膚病になりやすい要素の一つです。
愛犬が体や耳をかゆがる、フケが多いなどの症状がある場合は早めに動物病院を受診しましょう。
また腸活などのおうちでのケアによって皮膚病が改善することもあります。
今回の記事を参考に愛犬の皮膚ケアに取り組んでみてください。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。