パグは大きな目や愛らしい表情で非常に人気のある犬種です。
一方でパグは皮膚病が多く、皮膚科で来院するケースが多い犬種でもあります。
「愛犬のパグが顔や体をしょっちゅうかゆがっている」
このような飼い主様も多いのではないでしょうか。
今回はパグに多い皮膚病と皮膚を守るためのケアについて獣医師が解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、パグの皮膚の健康のために役立ててください。
パグの特徴
パグの特徴はその愛らしい見た目と穏やかな性格にあります。
大きな丸い目や短い鼻、くしゃっとした表情豊かな顔立ちは多くの人に親しまれています。
そんなパグですが、体質や体の構造によって皮膚病が起きることが多いです。
パグの皮膚の特徴には次のようなものがあります。
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顔のしわが深い
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耳道が狭い
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アレルギー体質の犬が多い
これらの特徴が重なることでパグは皮膚病を起こしやすいと言われています。
このためパグと健康に過ごすうえでは、これらの特徴をよく理解してケアをすることが大切です。
パグに多い皮膚病
パグはその体質や体の構造のために皮膚病にかかることが多い犬種です。
パグに多い皮膚病は以下が挙げられます。
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犬アトピー性皮膚炎
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皺襞性皮膚炎
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外耳炎
犬アトピー性皮膚炎
犬アトピー性皮膚炎は環境中のアレルゲンに反応してかゆみを起こす皮膚病です。
パグはアレルギー体質である場合が多く、以下の部位にかゆみが起きやすいです。
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顔面
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あご
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脇
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お腹
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手先
犬アトピー性皮膚炎では複数の部位に左右対称にかゆみが出ることが知られています。
なめているうちに皮膚の常在菌が増殖してかゆみや赤みが悪化することもあります。
色素性角膜炎に進行する場合も
顔面のかゆみが慢性的に続くと、色素性角膜炎になることもあります。
色素性角膜炎は角膜が慢性的に刺激されて色素が沈着して黒く濁る病気です。
外部からの光を通す角膜が黒くなると、見える範囲が狭くなっていきます。
パグは目が大きいため、顔面をこするときに眼球も刺激を受けることが多いです。
このためただのかゆみと思わず、早期に犬アトピー性皮膚炎の治療・管理が必要です。
皺襞性皮膚炎(すうへきせいひふえん)
皺襞性皮膚炎はパグのしわの内側で起こる炎症のことです。
しわの内側は皮脂やよごれがたまりやすく、かつ湿度が高くなりやすいです。
このため皮膚の常在菌が過剰に繁殖して炎症を起こすことがあります。
最初は気づきにくく、炎症が悪化して真っ赤になってはじめて気づくことも多いです。
治療は0.5%クロルヘキシジンによる消毒などの外用療法が推奨されます。
重症化すると抗生物質が使われることもあります。
このため皮膚炎を起こす前に日ごろからしわの内側を拭いておくなどのケアが大切ですね。
外耳炎
外耳炎は耳の入口から鼓膜までの耳道といわれる部分に炎症が起きる病気です。
外耳炎では耳に強いかゆみが生じ、犬はしきりに耳をかいたり、顔をふったりします。
パグは耳道が生まれつき狭く通気性が悪い構造を持つため、耳垢がたまりやすいです。
このため耳垢をエサにする耳の中の常在菌が過剰に繁殖して炎症を起こしやすいです。
治療としては耳洗浄で耳垢を除去することと、抗炎症治療を行います。
治療的な耳洗浄は自宅では難しいため、動物病院を受診しましょう。
また外耳炎は犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがそもそもの原因になっていることが多いです。
このため再発防止のためには、原因となっている病気の治療も大切ですね。
パグの皮膚病を予防するためのスキンケア
パグのデリケートな皮膚を守るためには、家庭でのスキンケアがとても重要です。
パグのスキンケアとしておすすめしたいものは以下の3つです。
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腸活
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顔のしわにエリスリトール
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耳の中にエリスリトール
それぞれについて解説します。
腸活
腸活は犬アトピー性皮膚炎や外耳炎のパグの体質改善にとても有用です。
腸活で腸内細菌叢が改善すると免疫のバランスが改善し、アレルギー反応が緩和します。
犬アトピー性皮膚炎には薬物治療が必要ですが、減薬するためには体質改善が重要です。
腸活は乳酸菌とケストースが入ったものが犬アトピー性皮膚炎に有効であると報告されています。
腸活は外耳炎にも有効である場合があるため、こちらも読んでみてください。
犬の外耳炎が治らない?|外耳炎の原因と腸活サプリメントによる対策を解説
顔のしわにエリスリトール
パグの顔のしわのケアにはエリスリトールが有効です。
エリスリトールとは糖アルコールの一種で、食品にも使われている安全性の高い成分です。
エリスリトールは皮膚の常在菌に対して静菌的に作用し、過剰な繁殖を抑えます。
このため抗生物質や消毒に頼らずに顔のしわの炎症を防ぐ効果が期待できます。
顔のしわを優しく拭いたあと、エリスリトールスプレーを塗布してください。
1日2-3回のお手入れを続けることが、パグのしわの健康のために有効です。
エリスリトールについてはこちらもチェックしてみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
耳の中にエリスリトール
外耳炎のケアにもエリスリトールが有効です。
パグでは耳道が狭く、耳の中で常在菌が過剰に繁殖しやすいです。
エリスリトールを耳の中に注入することで、耳の中の常在菌のバランスも整えてくれます。
点耳用のエリスリトールジェルを1日2回点耳することで外耳炎の再発を防止できます。
犬の外耳炎にはエリスリトールが有効?|繰り返す犬の外耳炎を予防するエリスリトールの効果を獣医師が解説!
まとめ
パグは愛らしく人気の犬種ですが、皮膚病が起きやすいデリケートな一面もあります。犬アトピー性皮膚炎などの皮膚病によってかゆみに悩まされることも少なくありません。
動物病院での治療に加え、今回ご紹介したご家庭でのスキンケアを実践してみてください。
毎日のケアを通して大切な愛犬の皮膚の健康を守っていきましょう。
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。

