冬になると部屋をあたためるために暖房をつけますよね。
しかし暖房をつけると犬が体をかくようになったと感じることはありませんか?
じつは寒さ対策のために使う暖房が、犬の皮膚にかゆみを起こしていることがあります。
特に犬アトピー性皮膚炎の犬は、冬の暖房による熱でかゆみが悪化することが多いです。
今回は冬の暖房が犬のかゆみを悪化させる理由と愛犬の皮膚におうちでできる冬のケアについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚の健康を守るためにお役立てください。
犬アトピー性皮膚炎の皮膚は熱に弱い
犬アトピー性皮膚炎の犬の皮膚はバリア機能が低下しており、熱に弱いです。
犬アトピー性皮膚炎は環境アレルゲンに反応して皮膚にかゆみや炎症を起こす病気です。
健康な犬の皮膚の場合は水分を内側に保ち、体を外部刺激から守っています。
ところが犬アトピー性皮膚炎の皮膚は水分を留めておけないため乾燥しやすく、外部の刺激に反応しやすいです。
特に熱は強い刺激であり、皮膚が熱くなると犬はかゆみを感じやすいです。
犬の皮膚の温度が上がって血行が良くなると、かゆみを感じる神経が刺激されます。
また熱により皮膚が乾燥すると、より外部のアレルゲンに反応しやすくなります。
このため犬アトピー性皮膚炎の犬の皮膚を直接あたためすぎないように注意が必要です。
冬の暖房はかゆみを悪化させる
冬の暖房で犬の皮膚が直接あたためられると、皮膚のかゆみが悪化します。
とくにストーブやこたつなど直接皮膚を強い熱であたためてしまう暖房は注意が必要です。
それらの暖房に長時間犬が当たると、皮膚の温度が上がり急激に乾燥してしまいます。
温度が上がって乾燥した皮膚はバリア機能がさらに低下し、神経も過敏になります。
このためストーブやこたつ、エアコンの風などによって犬の皮膚が直接あたためられすぎないように気を付けましょう。
また暖房によって室内の湿度が下がることも犬の皮膚にとって良くありません。
空気が乾燥すると犬の皮膚も乾燥してしまうため、皮膚のバリア機能が低下します。
このため室内のハウスダストなどのアレルゲンに犬が反応しやすくなります。
暖房を使うときは加湿器などを使い、湿度が下がりすぎないようにすることが大切ですね。
冬のかゆみにおうちでできる対策
冬の乾燥や暖房による犬の皮膚のかゆみを防ぐには日常的なケアが欠かせません。
獣医師による治療は重要ですが、薬だけではなくおうちでのケアも行っていきましょう。
以下の3つがおうちでのケアとして有効です。
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暖房の工夫と加湿
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腸活
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保湿
暖房の工夫と加湿
暖房の工夫と加湿は冬の犬の皮膚ケアにおいて大切です。
犬の体を冷やさないために暖房は欠かせない一方で、皮膚に強い刺激を与えます。
また暖房を使いすぎると部屋の湿度が下がって犬の皮膚も乾燥しやすくなります。
犬の皮膚を熱や乾燥から守るために以下の3つを意識しましょう。
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犬を直接あたためない
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部屋全体をあたためる
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加湿をする
犬を直接あたためない
犬を直接あたためると皮膚の温度が上がって乾燥しやすいです。
犬を直接あたためないようにする工夫の例は以下です。
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ストーブなどの前にガードを設置する
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エアコンの風が犬に直接あたらないようにする
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犬を遠ざけられない暖房は撤去する(こたつなど)
このような工夫をすることで犬の皮膚が暖房で直接熱せられることを避けられます。
部屋全体をあたためる
部屋全体をあたためることは犬の皮膚を守るために大切です。
エアコンや床暖房などで部屋全体をあたためるほうが犬の皮膚の温度が上がりにくいです。
なるべくストーブなど直接体をあたためる暖房に頼らないようにすることが大切ですね。
加湿をする
加湿をすることは冬に犬の皮膚をかゆみから守るうえで大切です。
冬はそもそも空気中の湿度が低いうえに、暖房をつけることで室内はかなり乾燥します。
人間の皮膚もかさかさしますが、犬の皮膚ももちろん乾燥してしまいます。
加湿器を設置したり濡れたタオルを室内に干すなど、湿度を上げる工夫をしましょう。
腸活
腸活は犬の冬の皮膚ケアとして有効です。
腸活によって腸内細菌が改善されると、過剰な免疫反応が抑制されます。
これにより犬アトピー性皮膚炎による皮膚トラブルの改善が期待されます。
腸活には乳酸菌やケストースを含むサプリメントを利用するとよいでしょう。
腸活には即効性はありませんが、3ヶ月以上続けることで体質改善につながります。
冬場の乾燥にも負けないように、はやめに体質改善に取り組みましょう。
腸活についてはこちらもチェックしてみてください。
保湿
犬の冬のかゆみ対策で非常に有効なのが保湿です。
犬の皮膚は人よりも薄く、乾燥の影響を受けやすい構造になっています。
冬場はとくに皮膚が乾燥しないように保湿剤を塗ることが大切ですね。
保湿剤にはスプレータイプやジェルタイプなどさまざまな質感のものがあります。
飼い主様と愛犬にとって長く継続しやすいものを選ぶと良いです。
保湿は一日のうちに何度も行うことが重要で、必ず1日2回以上は実施しましょう。
とくにシャンプーやお風呂のあとは皮膚が乾燥しやすいため必ず保湿をしてあげましょう。
また膿皮症やマラセチアによる皮膚炎ができやすい犬ではエリスリトールが配合された保湿剤が有効です。
エリスリトールについてはこちらを読んでみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
まとめ
冬は寒さから犬を守るために暖房が欠かせません。
その一方で冬は暖房による乾燥や熱によって皮膚トラブルが増えることも多いです。
特にアトピー性皮膚炎の犬では、暖房の熱がかゆみを強くする原因になることがあります。
暖房の使い方を工夫したり、体の内側外側からのスキンケアに取り組むことで冬の皮膚トラブルから愛犬を守ることができます。
愛犬の皮膚の健康を守るために、今回の記事が役立てば幸いです。
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。

