犬の外耳炎にはエリスリトールが有効?|繰り返す犬の外耳炎を予防するエリスリトールの効果を獣医師が解説!

犬の外耳炎は動物病院で診察する機会がとても多い耳の病気です。
「愛犬の耳のかゆみが何度も再発してしまう」
という飼い主様も多いでしょう。
近年、耳の中の菌のバランスを整える成分として注目されているのがエリスリトールです。
エリスリトールは耳の常在菌の多様性を保ち、外耳炎の再発を防ぐ効果が期待されています。
今回は犬の外耳炎の原因や繰り返し外耳炎が起きる外耳炎に有効なエリスリトールについて獣医師がわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の耳の健康のためにお役立てください。

横を向いているトイプードル

犬の外耳炎とは

犬の外耳炎とは耳の入口から鼓膜までの外耳道で炎症が起こる病気です。
耳の赤みやかゆみ、独特なにおいが特徴的で、犬が耳をかきむしることも多いです。
犬の外耳炎の主な原因には次のようなものがあります。

  • 犬アトピー性皮膚炎

  • 食物アレルギー

  • 内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)

  • 異物(草の種など)

  • 寄生虫(ミミヒゼンダニなど)

この中でも最も再発を繰り返しやすいのが、犬アトピー性皮膚炎による外耳炎です。
犬アトピー性皮膚炎以外が原因であれば、原因となる病気の治療をすれば外耳炎の再発を防ぐことができます。
しかし犬アトピー性皮膚炎は完治させることができない病気です。
このため、犬にとって負担の少ない形で皮膚や耳のケアを継続する必要があります。

犬アトピー性皮膚炎と耳の常在菌

犬アトピー性皮膚炎は環境アレルゲンに反応して皮膚の炎症やかゆみが起きる病気です。
またこの病気の犬は皮膚のバリア機能が低下しており、耳の中も例外ではありません。
このため耳の皮膚を守ろうとして耳垢が多く産生されることも多いです。
耳垢が多いと耳の中の常在菌が過剰に増殖しやすく、これにより外耳炎が発生します。

犬の耳の常在菌

犬の耳の皮膚にはもともと多くの常在菌が住んでいます。
これらの菌は健康なときはお互いにバランスを保ち、外部の病原菌から耳を守っています。
しかし外耳炎を繰り返す犬では、この耳の常在菌が乱れていることが多いです。
健康な犬の耳では多様な種類の菌が共存していますが、外耳炎を繰り返す犬では常在菌の多様性が低下していることがわかっています。

特に犬アトピー性皮膚炎の犬の耳ではブドウ球菌などの菌が偏って増えています。
このように耳の中の常在菌のバランスが崩れた状態では、外耳炎が再発しやすいです。
そのため外耳炎を予防するためには、耳の中の常在菌バランスを整えることが重要です。

エリスリトールとは

エリスリトールとは自然界に存在する糖アルコールの一種です。
近年の研究でこのエリスリトールが犬の耳や皮膚の健康に役立つことがわかってきました。

エリスリトールは外耳炎を起こすブドウ球菌やマラセチアに対して静菌作用があります。
静菌作用とは、菌を完全に殺すのではなく増殖を抑える作用のことです。
エリスリトールの特徴は常在菌をすべて殺菌せず、菌のバランスを保ってくれることです。

外耳炎の急性期には抗生物質や抗真菌剤を使うことがありますが、これらの薬剤は常在菌も同時に殺菌してしまいます。
一方でエリスリトールは殺菌ではなく耳の中の常在菌バランスを改善し、外耳炎を起こしにくい状態を作ってくれます。
このためエリスリトールは長期間にわたって耳の健康を保つのに向いているといえますね。

エリスリトールについてはこちらもチェックしてみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説

耳をかいている柴犬

犬の外耳炎をエリスリトールで予防するには

犬の外耳炎をエリスリトールで予防するためには、正しい治療を行うことが大切です。

  1. 獣医師による耳洗浄と点耳薬

  2. 点耳薬の減薬

  3. エリスリトール含有ジェル

ひとつずつ解説します。

①獣医師による耳洗浄と点耳薬

獣医師による耳洗浄は外耳炎の急性期において最も重要な治療です。
外耳炎が起きているときは、多くの場合耳の中に耳垢がたまっています。
耳垢が残ったままだと薬が十分に効かないため、獣医師による洗浄が必要です。
洗浄後はステロイドや抗生物質を含む点耳薬を使って炎症を抑えます。
耳垢が減ると薬がよく浸透するため、耳のかゆみや赤みが落ち着いていきます。

② 点耳薬の減薬

点耳薬を徐々に減らすことは外耳炎の維持治療のために重要です。
はじめは点耳薬を毎日続けることで急性期の外耳炎の炎症を落ち着かせることが大事です。
また炎症が落ち着くと、増えすぎたブドウ球菌やマラセチアもほとんど検出されないようになります。
炎症と常在菌の増殖が落ち着いてきたら点耳薬を少しずつ減らしていきましょう。
毎日点耳していたものを2日に1回、3日に1回というふうに減らしていきます。
これは点耳薬にはステロイドが含まれており、連日の投与を続けることはできないためです。

③ エリスリトール含有ジェル

エリスリトール含有ジェルは外耳炎の維持治療期に有効です。
エリスリトールは耳の常在菌バランスを整えるため、外耳炎の再発を防ぐ効果があります。
一度外耳炎が治っても、継続的にエリスリトール含有ジェルを点耳することが大切ですね。

エリスリトール含有ジェルは洗浄液ではなく、耳道に直接注入する点耳タイプです。
1日2回を目安に少量を入れるだけで、耳の中の常在菌のバランスを整えてくれます。
エリスリトールにより薬に頼らずに、自然な耳の状態を保つことが期待できます。

まとめ

外耳炎は多くの犬に見られますが、特に犬アトピー性皮膚炎の犬では繰り返しやすいです。
犬アトピー性皮膚炎の犬の耳の常在菌叢は多様性が低下していることが知られています。
エリスリトールはブドウ球菌やマラセチアの増殖を抑えて、耳の常在菌のバランスを整えてくれます。

外耳炎の治療には獣医師による洗浄と点耳薬の投与が必要です。
その後の外耳炎の再発防止のためには、エリスリトールによって耳の常在菌を良い状態に保つことが大切ですね。
今回の記事が愛犬の耳の健康を守る一助となれば幸いです。

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記事監修者

伊従慶太獣医師

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)

麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。