犬のマラセチア性皮膚炎は多くの犬が抱える皮膚トラブルです。
「愛犬にシャンプーしてもすぐベタついて、独特のにおいがしてくる」
そんなときは犬の皮脂を洗いきることができていない可能性があります。
じつはなかなか落ちない犬の皮脂汚れにはクレンジングが有効です。
今回はマラセチアによる皮膚炎の予防を目的としたクレンジングケアについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚の健康のためにお役立てください。
犬のマラセチア性皮膚炎とは
犬のマラセチア性皮膚炎は皮膚に常在するマラセチアという菌の増殖による皮膚炎です。
マラセチアは皮脂をエサにしており、皮脂が多い犬の皮膚に増えやすいです。
この菌が何らかの原因で増殖すると、かゆみや赤み、独特なにおいを引き起こします。
またマラセチア性皮膚炎は犬の皮脂の分泌が増える病気が原因で発生します。
マラセチアは皮膚の常在菌であり、健康な犬の皮膚では無害です。
しかし以下の疾患がある犬は皮脂の分泌が多くマラセチアが増えやすくなります。
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犬アトピー性皮膚炎
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食物アレルギー
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内分泌疾患（甲状腺機能低下症など）
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原発性/続発性脂漏症
犬のマラセチア性皮膚炎ではマラセチアが増える原因となっている疾患を診断して、治療を進めていくことが大切です。
犬のマラセチア性皮膚炎には抗真菌シャンプー
犬のマラセチア性皮膚炎の治療は抗真菌シャンプーによる洗浄が効果的です。
抗真菌シャンプーは抗真菌剤であるミコナゾールを配合したシャンプーです。
このシャンプーは脱脂作用と抗真菌作用によりマラセチアを効果的に除去できます。
抗真菌シャンプーは薬剤耐性マラセチアの原因？
抗真菌シャンプーは非常に効果的ですが、無計画に使用すると薬剤耐性菌の原因にもなります。
薬剤耐性のマラセチアは一部の抗真菌剤が効かないマラセチアであり、日本においても分離されています。
じつは薬剤耐性のマラセチアが発生する原因は長期間の抗真菌シャンプーの使用です。
このため治療によりマラセチアの数が減ったら、抗真菌シャンプーに頼らないマラセチアの予防を行うことが大切です。
クレンジングによるマラセチアの長期ケア
マラセチア性皮膚炎の再発を防ぐための長期ケアにはクレンジングが有効です。
抗真菌シャンプーの漫然とした使用は薬剤耐性菌の発生につながりますね。
一方でクレンジングはマラセチアの殺菌ではなく、皮脂を減らすことでマラセチア性皮膚炎を予防します。
このためクレンジングはマラセチアの長期ケアに適しているといえます。
クレンジングによるシャンプーの手順
クレンジングによるシャンプーの手順を説明します。
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ぬるま湯で犬の皮膚をぬらす
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クレンジング剤をなじませて皮脂を浮かせる
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低刺激シャンプーで洗う
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保湿剤を皮膚になじませる
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洗い流さずに乾かす
皮脂を適切に洗い落とすことができれば、低刺激シャンプーで十分マラセチアを予防することができます。
シャンプーの頻度は週1回から2週に1回ぐらいが目安です。
クレンジング剤の種類
代表的なクレンジング剤は大きく分けて3つです。
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オイルクレンジング
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植物系クレンジングシャンプー
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サリチル酸含有シャンプー
それぞれについて解説します。
オイルクレンジング
オイルクレンジングは、毛穴の奥に詰まった皮脂や汚れを浮かせる効果に優れています。
ホホバオイルなどの植物由来オイルは皮膚になじみやすく洗った後に乾燥しにくいです。
顔まわりや指の間など限られた範囲の皮脂汚れだと使いやすいでしょう。
植物系クレンジングシャンプー
植物系クレンジングシャンプーは皮脂を除去しますが、皮膚への刺激が小さいです。
PEG-3コカミド、デシルグルコシドなどの植物由来の洗浄成分が含まれています。
全身に皮脂汚れが多い場合は、このタイプを使うと洗いやすく効果的です。
サリチル酸配合シャンプー
サリチル酸配合シャンプーは古い角質を柔らかくし、皮脂を落とす作用があります。
脂漏が強く皮膚が厚くなっている犬には特に適しています。
ただしサリチル酸は皮膚を乾燥をさせやすいため、頻繁な使用は避けるようにしましょう。
クレンジングケアとあわせて行いたいスキンケア
クレンジングケアとあわせてスキンケアを同時に行うことで、マラセチアが再発しにくい体質づくりができます。
クレンジングとあわせて行いたいスキンケアは以下の3つです。
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腸活
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保湿
腸活
腸活はマラセチアの予防として有効な内側からのスキンケアです。
腸内環境を整えることで免疫のバランスが改善し、皮膚の炎症が起きにくくなります。
皮膚に炎症が起きていると皮脂の分泌が盛んになるため、腸活によって皮膚炎が起きにくいように体質改善をすることが大切です。
腸活についてはこちらをチェックしてみてください。
保湿
保湿はマラセチアの予防のために有効なスキンケアです。
皮膚が乾燥すると皮膚のバリアを補うために皮脂の分泌が盛んになります。
保湿により皮膚の乾燥を防ぐと皮膚のバリアが強化され、皮脂の分泌が抑えられます。
保湿についてはこちらも読んでみてください。
まとめ
マラセチア性皮膚炎の治療では抗真菌剤配合のシャンプーが効果的です。しかし抗真菌シャンプーの長期間の使用では薬剤耐性菌が発生することがあります。
そのため症状が落ち着いた後はクレンジング剤を使って皮脂を適切に落として、マラセチアの増殖を予防することが大切です。
さらに腸活や保湿、低脂肪食といったスキンケアもあわせて行うことも有効ですね。
今回の記事を参考に、愛犬の皮膚の健康のためにクレンジングを取り入れてみてください。
記事監修者
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士（獣医皮膚病学）
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。