近年、犬アトピー性皮膚炎に対する新しい治療薬としてイルノシチニブが登場しました。
イルノシチニブは強力なかゆみ止めであり、1日1回で効果を発揮する利便性の高い薬です。
しかし、飼い主様は新しい薬が犬に副作用があるかどうかも気になりますよね。
イルノシチニブはいくつかの試験によって高い安全性が確認されています。
この記事ではイルノシチニブの効果と安全性、そして薬に頼り切らないためのスキンケアについて解説しています。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚の健康のために役立ててください。
イルノシチニブとは?
イルノシチニブは2024年11月に発売された犬アトピー性皮膚炎の新しい治療薬です。
イルノシチニブはかゆみや皮膚炎を起こす分子を抑制するため、分子標的薬と呼ばれます。
かゆみを抑える力が強く安全性も高いため、積極的に使用し始めている動物病院も多いです。
またイルノシチニブは1日1回の投薬で効果があるため、とても使いやすい薬です。
イルノシチニブに副作用はある?
イルノシチニブの安全性については複数の臨床試験によって調べられています。
臨床試験中に起きた体の異常を有害事象と呼びますが、これは必ずしも薬の副作用とは限りません。
有害事象にはたまたま起きた症状や、その犬のもともとの体質の影響も含まれるためです。
イルノシチニブの有害事象は軽度
イルノシチニブの臨床試験では、服用した犬に起きた有害事象は軽度なものでした。
犬アトピー性皮膚炎の犬を対象にした試験(プラセボ薬との比較)では投与開始から28日間の有害事象が記録されています。
ただしどの有害事象もイルノシチニブとの関連性がなく、イルノシチニブの副作用ではないと判断されました。
28日間の試験期間に5%以上の犬で起きた有害事象は以下が挙げられます。
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かゆみ
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嘔吐・下痢
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元気消失
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外耳炎
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白血球数の減少
かゆみ
かゆみはイルノシチニブを飲んだ犬の約16%で認められました。
ただしかゆみは犬アトピー性皮膚炎の症状であり、イルノシチニブが原因でかゆみが増した可能性は考えにくいです。
嘔吐・下痢
イルノシチニブを飲んだ犬の約9.4%で嘔吐が、約11.0%で下痢が見られました。
どの犬も一時的な症状にとどまり、対症療法によって回復しています。
外耳炎
外耳炎はイルノシチニブを飲んだ犬の6.1%で見られました。
外耳炎ももともと犬アトピー性皮膚炎の症状であるため、イルノシチニブが原因ではあるとは考えにくいです。
嗜眠
嗜眠はイルノシチニブを飲んだ犬の8.3%で見られました。
ただしイルノシチニブを飲んでいない犬でも元気消失は9.1%で認められたため、副作用とは考えにくいです。
これらの発生状況は試験112日でも同様でした。
イルノシチニブのワクチンへの影響は?
イルノシチニブは免疫抑制作用があるため、ワクチンの効果を妨げないか気になる飼い主様もいるかもしれません。
しかしイルノシチニブを通常の3倍量で投与している犬でも、以下のウイルスに対するワクチンで十分な免疫が得られることが最新の研究でわかっています。
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狂犬病ウイルス
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犬パルボウイルス
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ジステンパーウイルス
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犬アデノウイルス2型
このため、イルノシチニブの投与によってワクチンの効果が妨げられる可能性は低いです。
イルノシチニブは安全性が高い
イルノシチニブは重篤な副作用もなく、安全性の高い薬です。
28日間の有害事象を解説しましたが、その後別の研究で半年間の安全性が確認されています。
半年間の研究では通常の5倍のイルノシチニブを犬に投与しても、体調不良や血液検査の異常が認められませんでした。
ただしイルノシチニブの半年以上の長期間の安全性についてはまだわかっていません。
このため長期間の使用の際は、症状が落ち着いたら減薬を考えても良いでしょう。
また定期的な健康診断によって有害事象の有無を確認することも大切です。
イルノシチニブの減薬のための補助療法
イルノシチニブを減薬するためには、薬以外の補助療法を活用しましょう。
以下の3つの補助療法がおすすめです。
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腸活
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保湿
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栄養素の補給
腸活
腸活は体質改善により犬アトピー性皮膚炎を改善する体の内側からのケアです。
腸内の善玉菌が増えると過剰な免疫反応が抑制され、かゆみが改善することがあります。
このため腸活によりイルノシチニブの投与量を減らすことが期待できます。
腸活についてはこちらも読んでみてください。
保湿
保湿は犬の皮膚の乾燥を改善して皮膚バリア機能を強化するスキンケアです。
毎日の保湿で皮膚バリア機能が改善するとかゆみが減って、イルノシチニブを減薬できる可能性があります。
保湿についてはこちらもチェックしてみてください。
栄養素の補給
栄養素の補給は、イルノシチニブの減薬のために有効なスキンケアです。
とくに以下の栄養素が皮膚ケアに役立ちます。
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オメガ3脂肪酸
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ビタミンE
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亜鉛
これらの栄養素は皮膚の炎症を抑え、皮膚の修復を助けるはたらきがあります。
栄養素の摂取についてはこちらの記事も参考にしてください。
犬の皮膚の健康を守るサプリメントとは|犬のサプリメントの成分を解説
まとめ
イルノシチニブは犬アトピー性皮膚炎に対する高い効果と安全性を両立した新しい薬です。安全性試験では重篤な副作用は乏しく、ワクチン効果への影響も問題ないとされています。
ただし長期間投与する場合は、定期的な検査と減薬を行うことが必要です。
おうちでのスキンケアも取り入れて、愛犬の健康とかゆみの管理に取り組みましょう。
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。

