犬の皮膚が黒くなる?!|黒い皮膚の原因と対応を獣医師が解説
愛犬と触れ合っていると皮膚が黒くなっていることに気づくことはありませんか。
犬の皮膚は基本的にうすいピンク色をしていますが、さまざまな原因で黒くなってしまうことがあります。
特にお腹や脇などの毛のうすいところの皮膚の色の変化には気が付きやすいですよね。
今回は犬の皮膚が黒くなってしまう原因とその対策について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚が黒くなってしまった際の参考にしてみてください。
犬の皮膚が黒くなる原因
犬の皮膚は炎症や皮膚病、外部環境などの影響で黒くなることがあります。
犬種にもよりますが、正常な犬の皮膚はうすいピンク色です。
ただ正常な皮膚は黒い色素であるメラニン色素もわずかに含んでいて、メラニン色素が多量に産生されると皮膚が黒くなります。
メラニン色素が多量に産生されるのは以下の原因によることが多いです。
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皮膚炎
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紫外線
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加齢
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腫瘍
それぞれについて見ていきましょう。
皮膚炎
皮膚炎は皮膚が黒くなる主要な原因であり、特に犬アトピー性皮膚炎やマラセチア性皮膚炎である場合が多いです。
これらの皮膚炎になると皮膚にかゆみと炎症を起こし、はじめは皮膚が赤くなります。
しかし、皮膚の炎症が長期化するとだんだん皮膚は黒くなっていきます。
炎症による皮膚への刺激から皮膚を守るためにメラニン色素が集まり、皮膚が黒くなっていきます。
皮膚炎で皮膚が黒くなった場合は、皮膚のかゆみをなくすことで少しずつ正常な色に戻すことが出来ます。
紫外線
紫外線によっても犬の皮膚は黒くなります。
犬の皮膚は紫外線を長時間浴びると、皮膚の細胞を保護するためにメラニン色素を産生します。
通常、犬の皮膚は毛におおわれているため地肌が露出しておらず、あまり問題にはなりません。
しかし皮膚病で脱毛している場合や、サマーカットなどで毛刈りをした場合は紫外線にさらされるため皮膚が黒くなりやすいです。
また、紫外線を浴びすぎると皮膚に腫瘍が出来てしまうこともあります。
適度な日光浴は健康に良い影響がありますが、過剰にならないように気を付けましょう。
加齢
加齢のため染みができたり、模様が変化して皮膚が黒くなることがあります。
この場合、皮膚は黒くなっても平たいままで盛り上がらないことが特徴です。
また、黒い部分と正常な部分の境界線は明瞭なことが多いです。
特に健康上の問題はありませんが、判断が難しい場合は獣医師に相談しましょう。
腫瘍
腫瘍によって皮膚が黒くなる場合があり、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
黒い良性腫瘍はほくろと呼ばれることもあり、特に高齢の犬だとできやすくなります。
大きさは5㎜程度のことが多く、正常な皮膚との境界が明瞭なのが特徴です。
特に健康上の問題はありませんが、急に大きくならないかは注意しましょう。
一方で、黒い悪性腫瘍はメラノーマと呼ばれる腫瘍であり、転移率も高く命に関わります。
メラノーマは大きさが短期間で大きくなること、周囲の皮膚との境界がはっきりしないことが特徴です。
特に初期のうちは良性腫瘍と見分けがつかないことがあるため、場合によっては摘出して病理検査をする必要があります。
愛犬に黒いできものができて判断に迷った場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
犬の皮膚が黒くなった時の対策
犬の皮膚が黒くなってしまったときは、まずは動物病院で相談しましょう。
犬の皮膚が黒くなる原因をいくつか挙げましたが、飼い主様が判断するのはむずかしい場合があります。
特に腫瘍であった場合は外科的な処置が必要です。
獣医師による診断を受けた上で、ご家庭でもできる対策をいくつかご紹介いたします。
黒くなった皮膚に対してご家庭でできる対策は以下の3つです。
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腸活
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保湿
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紫外線対策
ひとつずつ見ていきましょう。
腸活
腸活はアレルギー性皮膚炎が原因で黒くなった皮膚を正常に戻すうえで有効です。
腸活には腸内細菌を改善することでアレルギー体質を改善させる可能性があります。
このため腸活によって皮膚のかゆみが減ると、脱毛や皮膚炎が改善して少しずつ皮膚の色が正常化することが期待できます。
腸活は即効性はありませんが、腸活のサプリメントを長く継続することで少しずつ黒い色が抜けていく可能性があります。
腸活についてはこちらにまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
犬の腸活完全攻略ガイド|腸と皮膚の意外な関係とは
保湿
保湿は皮膚炎で皮膚が黒くなった際の対策として有効です。
特に犬アトピー性皮膚炎で黒くなった皮膚は乾燥していることが多く、このため皮膚炎が起きてかゆみが出やすくなっています。
日常的に保湿をすることで皮膚を乾燥から守ると、皮膚のかゆみが減って黒い色がすこしずつ減っていきます。
保湿についてはこちらで詳しくまとめているので、ぜひ読んでみてください。
紫外線対策
紫外線対策は皮膚が黒くなった際の対策として有効です。
脱毛して地肌が露出したところに紫外線を浴び続けると、犬の皮膚も黒くなっていきます。
ただ犬用の日焼け止めクリームは存在しないため、日光を浴びすぎないことが大切です。
夏などの紫外線の強い時期は、早朝や陽が落ちた涼しい時間に散歩をしましょう。
ドッグランに出かける際は、薄手の服を着せて毛のうすいところを隠してもよいかもしれません。
まとめ
犬の皮膚が黒くなる原因はさまざまであり、獣医師にきちんと診断してもらうことが重要です。
ただ、その中でも皮膚炎が原因で皮膚が黒くなることは非常に多いです。
原因に対する治療に加えて、適切な対策をとることで黒くなった皮膚が正常な色に戻ったり、進行を防止することができる場合があります。
愛犬の健康な皮膚のために、ぜひご紹介した対策をご家庭で取り入れてみてください。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。