犬の脇に湿疹ができる理由|脇の湿疹は常在菌対策が重要!獣医師が解説
犬の脇は体の中でも湿疹ができやすい場所です。
犬の脇は一緒に過ごしていても見えにくい部位であり、なかなか観察することもないですよね。
「ふと愛犬をバンザイさせてみたら脇が赤くなっていた!」
という飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は犬の脇に湿疹ができる理由とその対策を解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の脇に湿疹ができているときに役立ててください。
脇に湿疹ができる理由
犬の脇は湿疹ができやすく、いつのまにか犬が脇をかゆがっていることも多いです。
実は脇にできる湿疹は、皮膚にもともと存在する常在菌が繁殖してできるものがほとんどです。
その皮膚の常在菌が脇で繁殖する理由として以下の3つが挙げられます。
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蒸れやすい
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こすれやすい
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不衛生になりやすい
ひとつずつ見ていきましょう。
蒸れやすい
脇は蒸れやすい部位であり、体の中でも湿度の高い部位です。
皮膚は湿度が高くなると、皮膚の常在菌が繁殖しやすくなります。
このため、脇の皮膚に常在菌が増殖しすぎて湿疹とかゆみを起こすことがあります。
とくに肥満の犬では脇の皮膚どうしが密着して湿度が高くなりやすいため、湿疹ができやすいです。
こすれやすい
脇はこすれやすい部位であり、摩擦により皮膚がダメージを受けやすいです。
皮膚は日常的にこすれていると皮膚炎をおこし、皮膚を保護するために皮脂を盛んに分泌します。
そのため皮脂をエサにする菌も繁殖しやすく、湿疹ができることが多いです。
とくに肥満の犬の場合は脇はこすれやすくなり、湿疹ができやすいです。
不衛生になりやすい
脇は不衛生になりやすいため湿疹ができやすいです。
犬は毎日シャンプーをするわけではありませんから、特に脇は汚れがたまっています。
そのため皮脂やフケがたまって不衛生になり、皮膚の常在菌が増えすぎてしまいます。
脇にできる湿疹
脇にできる湿疹は皮膚の常在菌の繁殖によるものが多いです。
皮膚の常在菌が原因となる皮膚病として以下の2つを挙げることができます。
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マラセチア性皮膚炎
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膿皮症
それぞれについて説明します。
マラセチア性皮膚炎
マラセチア性皮膚炎は皮膚の常在菌であるマラセチアが繁殖して起きる皮膚炎です。
マラセチア性皮膚炎はかゆくなる前に湿疹ができ始めるため最初は気が付かないこともあります。
見た目の特徴は以下の通りです。
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べたべたしたフケ
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脇の下全体の赤み
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ニキビのような赤いプツプツ
マラセチアは皮脂をエサにして繁殖する酵母菌であり、脇は特に増えやすい場所です。
特に夏は高温多湿で皮膚がべたべたするため、マラセチアが繁殖しやすくなります。
膿皮症
膿皮症は皮膚の常在菌であるブドウ球菌が毛穴に繁殖して起きる皮膚炎です。
膿皮症の湿疹の見た目はさまざまであり、以下のいずれかのような湿疹が多いです。
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ニキビのような赤いプツプツ
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円形のカサブタ
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真っ赤なただれ
膿皮症の場合はかゆみが弱いことも多く、気が付くといつの間にかブツブツがたくさんできていることがあります。
脇にできる湿疹の対策
脇に湿疹ができたときは、まずどんな菌が繁殖しているのか獣医師に診断してもらうことが大切です。
特殊な皮膚病になっていることもあるため、まずは動物病院を受診しましょう。
ただ、「動物病院で治療をしても愛犬に繰り返し湿疹ができてしまう」
という方もいらっしゃるかもしれません。
脇の湿疹を予防するには、以下のような対策を実施すると有効な場合があります。
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定期的な洗浄
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ダイエット
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エリスリトール含有の保湿剤
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腸活
ひとつずつ見ていきましょう。
定期的な洗浄
定期的に脇を洗浄することは湿疹を防ぐ上で有効です。
脇は特に皮脂がたまりやすい場所のため、定期的に洗い落としましょう。
犬のシャンプーの平均的な頻度は1ヶ月に1~2回ですが、脇に湿疹ができやすい場合は週に1回は洗浄したほうがよいことがあります。
シャンプー剤については、獣医師に相談のうえ適切なものを使用しましょう。
ダイエット
ダイエットは犬が肥満している場合に脇の皮膚炎を防ぐうえで有効です。
肥満の犬は脇がこすれやすいため常に皮膚に刺激が加わっている状態です。
このため皮膚炎に対する治療を行っても再発することが多く、ダイエットはとても重要だと言えます。
おやつを減らしたり、ダイエット用の低カロリーのドッグフードに変更するとうまくいくことが多いです。
現状の食事量から20〜30%ほど量を減らすことも有効ですが、いきなり減らしすぎると犬へのストレスが強いので少しずつ減らしましょう。
エリスリトール含有の保湿剤
エリスリトールは糖アルコールの一種で、脇の皮膚炎を防ぐうえで有効です。
エリスリトールには皮膚のブドウ球菌の過剰な増殖を抑えることで皮膚の細菌叢のバランスを整える効果があります。
このエリスリトールを含んだ保湿剤を日常的に使用することで、脇の皮膚にブドウ球菌が繁殖しすぎないようにすることができます。
エリスリトールについては、こちらにまとめているのでぜひ読んでみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
腸活
腸活は腸内細菌叢を改善することで皮膚炎が起きにくい体質を作るため、脇の湿疹に対しても有効です。
もともと犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の犬の皮膚は、蒸れやこすれに弱いため湿疹ができやすいです。
このため、腸活でアレルギー体質を変えていくことが脇の湿疹の予防に有効なことがあります。
特にオリゴ糖の一種であるケストースを用いた腸活は有効性が高いと言われています。
ケストースを用いた腸活についてはこちらにまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
腸の善玉菌を増やすケストースとは|腸活で犬・猫の健康状態が改善する?
まとめ
脇は蒸れやすくこすれやすいため湿疹ができやすいです。
脇は見えにくい場所であるため、気を付けていないといつの間にか赤くなっていることもあります。
また、脇の湿疹を防ぐためには日ごろからさまざまな対策を行うことが重要です。
愛犬の健康な皮膚のために、今回解説した対策をぜひ取り入れてみてください。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。