犬の肉球が赤くなるのはなぜ?|肉球が赤い場合に考えられる原因と対策を解説
犬の肉球が赤くなっていると飼い主様として心配になりますよね。
犬の肉球はクッションや体温調節などの重要な役割を担っています。
しかし、肉球は外部からの刺激にさらされやすく、トラブルが起きやすい部位です。
この記事では犬の肉球が赤くなっている場合に考えられる原因とその対策をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の肉球のトラブルに対処できるようにしましょう。
犬の肉球の役割
肉球は犬の生活において重要な役割を果たします。
肉球は弾力性に富んだ特殊な構造をしており、以下のような機能があります。
衝撃を吸収する機能
肉球の内部にはクッション性の高い脂肪組織が詰まっており、表面は厚くて硬い角質層で覆われています。
この特殊な構造が地面からの衝撃を吸収する役割を果たし、関節や骨への負担を軽減します。
特に大型犬や運動が活発な犬種では骨や関節への負担が大きいため、肉球のクッション機能が非常に重要です。
滑り止め機能
肉球の表面はザラザラとした粗い構造になっており、地面との摩擦力を高め、滑りにくくするグリップの役割を果たしています。
この構造のおかげで急な方向転換や、走り出しもスムーズに行うことができます。
ただし、加齢や乾燥によって肉球が硬くなると、この滑り止め効果が低下するため注意が必要です。
発汗
犬の肉球には他の体の部位とは異なる汗腺が存在しています。
肉球から分泌される汗は肉球に柔軟さを与える他、体温調整にも関与しています。
感覚機能
肉球には神経が集中しており、優れた触覚器官としての役割もあります。
肉球は地面の温度や質感、振動などを敏感に察知できるため、危険を回避したり、獲物を追跡したりするのに役立ちます。
しかし、この敏感さゆえに、肉球に傷や炎症があると不快感を感じやすいです。
犬の肉球が赤くなる原因とは?
犬の肉球は外部からの刺激を受けやすいため、さまざまなトラブルを起こしやすいです。
ここでは犬の肉球が赤くなる代表的な原因を紹介します。
アレルギー性皮膚炎
犬の肉球が赤くなるもっとも一般的な原因は犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、接触皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎です。
アレルギー性皮膚炎ではハウスダストやダニなどの環境アレルゲン、植物や土などの接触物、特定の食材に対して免疫が過剰に反応し、皮膚の炎症を起こします。
皮膚のかゆみが強いと、睡眠が妨げられ、犬の生活の質が著しく低下するので要注意です。
アレルギー性皮膚炎は肉球以外にも顔やお腹など、全身に症状が出るケースも少なくありません。
感染症
細菌感染やマラセチアなどの真菌感染も肉球の赤みを引き起こします。
特に夏場などは肉球が湿った環境になりやすく、細菌や真菌が増殖しやすいです。
症状が進行すると、肉球が腫れたり、肉球から膿が出ることもあります。
外傷
散歩中にガラスやトゲなどの異物を踏むと、肉球に刺さってしまい、赤みや痛みを引き起こします。
痛みが強い場合は足を引きずることもあり、整形外科疾患と間違われることもあります。
また、夏場のアスファルトでも肉球がやけどをしてしまい、赤くただれることがあるので注意しましょう。
ストレス
犬も人間と同じように、ストレスを感じることがあります。
犬はストレスが溜まると、自分の足を過剰に舐めたり、噛んだりすることで肉球の赤みが見られます。
このような場合はストレスを減らす対策が重要です。
乾燥
肉球が乾燥すると、外部刺激に対して敏感になり、炎症を起こしやすくなります。
炎症を起こした肉球はかゆみや痛みを伴い、犬が肉球を舐めることで赤みが生じます。
特に冬場は乾燥した空気や暖房の影響で、犬の肉球が乾燥しやすくなるので要注意です。
また、肉球を頻繁に洗いすぎると必要な皮脂がなくなり、乾燥を引き起こす原因となります。
犬の肉球が赤いときに飼い主様はどうするべき?
犬の肉球が赤いことに気づいたら、まずは動物病院を受診しましょう。
自己判断でケアを行なってしまうと、原因に対して適切なアプローチができず、症状が悪化してしまうこともあります。
以下のような症状に注意しましょう。
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肉球の赤みが強い
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肉球が腫れている
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肉球から膿が出ている
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肉球が熱を持っている
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肉球を痛がる
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歩きたがらない
これらの症状が見られる場合は、適切な治療が必要なことが多いです。
適切な治療を行いながら、自宅でもできるケアを行うことが肉球の赤み対策としてもっとも効果的ですね。
自宅でできる肉球ケア
愛犬の肉球の健康を保つためには日々のケアが欠かせません。
ここでは、自宅で簡単にできる肉球ケアの方法をご紹介します。
毎日の習慣として、愛犬とのコミュニケーションを楽しみながら肉球ケアをしてあげましょう。
定期的な洗浄
散歩など外から帰ってきたら、まずは肉球を優しく洗うことが重要です。
肉球を洗う際はぬるま湯を使って柔らかい布やスポンジで優しく拭き、泥や汚れを取り除きます。
洗った後は、しっかりと乾燥させることも大切です。
湿った状態は細菌や真菌の繁殖を促す可能性があるため、特に指の間や肉球の溝を丁寧に拭いて乾かしましょう。
保湿ケア
肉球の乾燥を防ぐためには保湿ケアを欠かさないようにしましょう。
犬専用の保湿剤を定期的に塗布することで、肉球の柔軟性を保ち、外的刺激から保護することができます。
細菌感染などがある場合はエリスリトールなどの抗菌成分が含まれる保湿剤がおすすめです。
以下の記事では抗菌作用のあるエリスリトールによるスキンケアについてまとめているのでチェックしてみてください。
犬の皮膚の健康とエリスリトールの関係|エリスリトールの作用を解説
マッサージ
肉球のケアではマッサージを行うこともあります。
肉球を優しくマッサージすることで血行が促進され、健康な肉球を保つことが可能です。
また、マッサージを通して肉球をよく観察することで赤みなどの異常にすみやかに気がつくことができます。
まとめ
肉球のケアは犬の健康管理において非常に重要です。
今回ご紹介したケア方法を日常的に実践することで、多くの問題を予防することができます。
ただし、肉球のトラブルの改善が見られない場合は必ず獣医師に相談するようにしてください。
定期的なケアを通じて、愛犬の肉球の健康を維持し、快適な生活をサポートしていきましょう。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。