犬の外耳炎の手術|犬の外耳炎手術の術式と慢性化させないためのケアについて獣医師が解説!

「愛犬が外耳炎で手術が必要と言われた」
このように感じて、心配されている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の外耳炎の多くは点耳薬で治りますが、慢性化して重症化している場合では手術が必要になることもあります。

今回は犬の外耳炎の手術の術式と、外耳炎の慢性化を防ぎ、手術に至らせないためのケアについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の外耳炎のケアに役立ててください。

風で毛がなびいている茶色い犬

犬の外耳炎とは?

犬の外耳炎とは、耳の入口から鼓膜までの外耳道に炎症が起きる病気です。
外耳道に炎症が起こることで耳垢がたまったり、犬が耳をかいたりすることで飼い主様が外耳炎に気づくことも多いです。
犬の外耳炎のほとんどは耳の洗浄と点耳薬による治療で改善し、手術が必要になるのは一部のケースに限られます。

犬の外耳炎で手術が適応になるとき

犬の外耳炎で手術が適応になるのは、外耳炎が慢性化して以下の状態になった場合です。

  • 耳道が石灰化している場合

  • 耳道が重度に腫れている / 腫瘍がある場合

それぞれについて解説します。

耳道が石灰化している場合

犬の外耳炎が慢性化すると、耳道を形作っている軟骨が石灰化して骨のように固くなることがあり、このような場合は手術が適応になります。
この状態では耳の洗浄や点耳による治療では改善しないことが多く、根本的には石灰化した耳道ごと切除することが必要です。

耳道が重度に腫れている / 腫瘍がある場合

犬の外耳炎が慢性化すると、耳の入口が腫れて耳の穴が見えなくなることもあります。
点耳薬に反応すれば良いですが、治療しても腫れがまったく引かないときは外科手術も検討されます。また、耳道に腫瘍ができた場合は外科的に切除する必要があります。

犬の外耳炎の手術の術式

犬の外耳炎の手術には、外耳道のどこまでを切除するかによって、主に3つの術式があります。

  • 外側耳道切除術

  • 垂直耳道切除術

  • 全耳道切除術

犬の外耳道は途中でくの字に曲がっており、入口側が垂直耳道、鼓膜側が水平耳道と呼ばれています。

外側耳道切除術

外側耳道切除術は、犬の耳の入口をふさいでいる組織を切除する手術です。
耳の入口付近の腫れが中心で、奥の耳道は正常な状態が保たれている場合に選択されます。
垂直耳道の外側を部分的に切除するため、耳の形も大きく変わらず、術後の負担も比較的軽い術式です。

垂直耳道切除術

垂直耳道切除術は、犬の外耳道のうち垂直耳道を完全に切除する手術です。
垂直耳道に耳道の腫れや石灰化が限られている場合に選択されます。
術後も水平耳道は残るため、耳道の洗浄やケアが必要です。

全耳道切除術

全耳道切除術は、垂直耳道と水平耳道をすべて切除する手術です。
耳道軟骨が全体的に石灰化し、耳道が肥厚して治らない場合に適応となります。
3つの術式のなかでは切除する範囲が最も広く、術後の負担も大きくなります。

レジャーシートの上のトイプードル

犬の外耳炎の手術のメリットとデメリット

犬の外耳炎の手術には、メリットとデメリットの両方があります。

メリット

犬の外耳炎の手術のメリットは、内科的な治療で治らない外耳炎を根本から改善できることです。
耳のかゆみや痛みがなくなって生活の質が高まり、耳介も残すことができるため見た目の変化も最小限です。

デメリット

犬の外耳炎の手術には全身麻酔が必要で、垂直耳道切除術や全耳道切除術では術後の痛みも強いことがデメリットです。
とくに全耳道切除術では顔面神経を傷つけることがあり、顔の一部が動かせなくなる顔面神経麻痺や、片目の瞳孔が小さくなるホルネル症候群が起こる場合もあります。また、複数かの手術が必要となる場合もあります。

犬の外耳炎を慢性化させないために大切なこと

犬の外耳炎を慢性化させないためには、炎症が軽いうちに動物病院を受診することです。
外耳炎が軽症なうちに検査をしてもらって、適切な治療を受けることで慢性化することを避けることができます。
早い段階で外耳炎を治療することができれば、手術を受けずに済むことがほとんどです。

また、じつは犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが犬の外耳炎の背景にあることも多く、これらのアレルギーの対策も並行して行うことが大切です。

犬の外耳炎の再発を防ぐおうちケア

犬の外耳炎は動物病院での検査と治療が重要ですが、良くなってからも以下のおうちケアを続けることが再発防止のために有効です。

  • プロアクティブ療法

  • エリスリトール

  • 腸活

それぞれについて解説します。

プロアクティブ療法

プロアクティブ療法は、犬の外耳炎の再発予防に有効な点耳の方法です。
この方法では、炎症が治まったあともステロイドの点耳薬を週に1~2回の頻度で続け、外耳炎が起こる前に防ぎます。

プロアクティブ療法については、こちらも読んでみてください。

犬の外耳炎にはプロアクティブ療法が有効!|犬の外耳炎の再発予防とおうちケアを獣医師が解説

エリスリトール

エリスリトールは、犬の外耳炎の予防に活用できる成分です。
この成分は、外耳炎の原因となるブドウ球菌やマラセチアの増殖を抑え、耳の常在菌のバランスを整えます。

保湿剤などに含まれたものを耳に使うことで、耳の保護と外耳炎の再発予防が期待できます。
エリスリトールについてはこちらをチェックしてみてください。

犬の外耳炎にはエリスリトールが有効?|繰り返す犬の外耳炎を予防するエリスリトールの効果を獣医師が解説!

腸活

腸活は、犬の外耳炎の背景に多い犬アトピー性皮膚炎の症状を緩和する作用があります。
腸活によって犬アトピー性皮膚炎が発症しにくくなれば、外耳炎の発生も予防できる可能性があります。

日常の食事に、乳酸菌やケストースを含むサプリメントを取り入れると効果的です。
腸活についてはこちらをチェックしてみてください。

犬の腸活完全攻略ガイド|腸と皮膚の意外な関係とは

まとめ

犬の外耳炎の手術には、外側耳道切除術などいくつかの術式がありますが、いずれも体への負担が大きい治療です。
手術に至らせないためには、早めに動物病院を受診し、原因に合った治療を受けることが大切です。
そのうえでエリスリトールや腸活などのおうちでのケアを続けると、再発を防ぎやすくなります。
今回の記事が、愛犬の外耳炎でお悩みの飼い主様のお役に立てれば幸いです。

 

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記事監修者

伊従慶太獣医師

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)

麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。