シーズーに多い皮膚病を解説|皮膚がベタベタしやすいシーズーにしてあげられること
丸顔でコロンとした愛くるしいフォルムのシーズーは日本でも人気のある犬種の1つです。
「シーズーを飼う上で気をつけるべき病気は?」
このような疑問を持つ方も多いと思います。
シーズーは皮膚病に注意が必要です。
今回の記事ではシーズーで多く見られる皮膚病とその皮膚病に対してしてあげられることについて解説します。
シーズーを飼っている方は最後までお読みいただき参考にしてみてください。
シーズーの特徴
シーズーに皮膚病が多いのは体質に関連します。
特に毛がややしっとりする子では皮膚病に要注意です。
顔のしわに汚れが溜まりやすい
シーズーは短頭種に分類され、顔のしわが比較的多い犬種です。
しわの隙間には皮膚の汚れが溜まりやすく、適切にケアを行わないと皮膚トラブルの原因になります。
皮脂が過剰に分泌されやすい
シーズーはもともと中国原産であり、乾燥した気候に耐えられるように皮脂分泌が盛んです。
そのため、日本の湿度の高い環境では皮膚がベタベタしやすくなります。
皮脂が過剰に分泌され、皮表に蓄積することで皮膚の恒常性が崩れてしまいます。
シーズーに多い皮膚病
シーズーでは以下の疾患に特に注意が必要です。
マラセチア性皮膚炎
マラセチアは酵母様真菌の一種であり、いわゆるカビの仲間です。
マラセチアは外界から感染するものではなく、どんな犬でも皮膚の表面にマラセチアが存在します。しかし、何らかの原因でマラセチアが過剰に増殖することで皮膚炎を起こします。
マラセチアは皮脂が多い環境を好むため、皮脂分泌の盛んなシーズーでは過剰に増殖しやすい傾向があります。
マラセチア性皮膚炎になってしまうと皮膚の赤みやかゆみが生じます。
治療はマラセチアをやっつける薬(抗真菌薬など)の薬物療法が一般的に用いられますが、原因となる皮脂の管理をするためにシャンプーや入浴などのスキンケアが重要となります。
脂漏症
脂漏症とは皮脂バランスが崩れてベタつきやフケが多くなる病気です。
脂漏症は原発性と続発性に分けられます。
原発性の脂漏症は生まれつきの皮脂腺の数や皮脂の質が原因となります。
続発性の脂漏症は
- 食事の影響
- 内分泌疾患(ホルモンのバランスの乱れ)
- 誤ったスキンケア(洗い過ぎなど)
- アレルギーなど皮膚に炎症を起こす病気
などが原因となって、皮脂の分泌や質に変化が起こることで発症します。
シーズーでは原発性も続発性の脂漏症も起こす可能性が高い品種です。
また、脂漏症では上記のマラセチアの増殖を伴い、同時に治療が必要になる場合も多いです。
原発性脂漏症の対応では、第一に皮脂の正常化やフケを管理するために、洗浄や入浴などのスキンケアが重要となります。
続発性脂漏症が疑われる場合は、原因を探索して管理することが最も重要となります。
そのためには食事の管理や健康診断、皮膚の詳しい検査をする必要がありますね。
犬アトピー性皮膚炎
犬アトピー性皮膚炎はアレルギー性皮膚疾患であり、主に環境アレルゲンや食物アレルゲンが関与します。
また、皮膚のバリア機能の低下、皮膚や腸内細菌の乱れも伴いやすい病気です。
症状は繰り返す慢性的な痒みと皮膚炎が特徴です。
- 目
- 口
- 耳
- 首
- 脇
- お腹
- 足先
などに症状が出やすい傾向にありますね。
犬アトピー性皮膚炎は他の病気の原因や悪化要因となることもあります。
- 外耳炎
- 続発性脂漏症
- マラセチア性皮膚炎
などは特に注意が必要な病気です。
犬アトピー性皮膚炎はどのようなタイプなのか診断し、タイプに応じた治療を組み立てることが最も大事です。
犬アトピー性皮膚炎のタイプには以下のものがあります。
- 環境中のアレルゲンに反応する環境型
- 食物アレルゲンに反応する食事型
- 環境型、食事型の両方の特性をもつ混合型
これらを正確に診断するためには皮膚科の検査や食事の管理を行わなければいけません。
一般的に犬アトピー性皮膚炎の初期は、抗アレルギー薬を用いて痒みと皮膚炎をしっかりと緩和する治療を行います。
症状が緩和した後にはそれぞれのタイプに合わせて
- 食事管理
- 皮膚のバリア機能向上のスキンケア
- 腸活などの体質改善療法
を行なっていきます。
治療には少し時間はかかりますが、皮膚の症状が出にくく、薬も必要最小限にしていくことが目標になります。。
シーズーの皮膚病を悪化させないためにできること
ここまで解説したようにシーズーには様々な皮膚病が発生します。
ここでは
「どうしたらシーズーが皮膚を悪化させずに済むか」
について解説していきます。
スキンケア
症状がなくともスキンケアを始めてみましょう。
まずは、負担なく続けられるような保湿剤から始めて見ることをお勧めします。
もし、皮膚のベタつきや汚れ、匂いなどが気になる場合はシャンプーや入浴にも取り組みましょう。
シャンプーは洗浄力の弱い製品を、入浴は保湿入浴剤から初めて見ると良いでしょう。
シャンプーの選択に迷う場合は、一度動物病院へご相談ください。
皮膚に良い栄養成分を含んだ食事やサプリメントもおすすめです。
サプリメントに含まれる成分としては、ω-3およびω-6必須脂肪酸が犬の皮膚の恒常性やバリア機能を高めるものとして古くから活用されています。
症状に早く気づき、動物病院へ相談すること
定期的にスキンケアを実施することで皮膚を観察することができ、皮膚の症状に早く気づくことができます。
特にシーズーでは
- 赤み
- ぶつぶつ
- ベタベタ
- フケ
などの症状がないかを確認しましょう。
軽い症状であっても、病院へ早期に相談することで、早期診断・早期治療が可能となります。
すぐに病院を受診できない場合は、写真で症状を記録しておくことも検討してください。
腸活
犬アトピー性皮膚炎では、腸内細菌の乱れが病態に関与している可能性が近年の研究で報告されています。また、腸内細菌の乱れが改善して善玉菌が増えることで、症状の改善や減薬、発症予防、再燃予防なども期待できます。
腸活には
- 乳酸菌などの善玉菌を投与するプロバイオティクス
- 善玉菌の成分や産生物を投与するバイオジェニックス
- 善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を投与するプレバイオティクス
などがあり、組み合わせることで相乗効果も期待できます。
近年ではプロバイオティクスのパラカゼイ菌とプレバイオティクスのケストースというオリゴ糖を投与すると、アトピー性皮膚炎の犬に効果があったという報告もありますね。
皮膚のみならず、腸が元気なことは体全体の健康にも繋がりますし、腸活は食事に加えることで気軽に始められるのでおすすめです。
まとめ
今回解説したようにシーズーには発症しやすい皮膚病があり、発症した場合はそれぞれの皮膚病に対して適切な診断と治療を行う必要があります。
皮膚病の症状が軽いうちに対処したり、そもそもの皮膚病の発症を予防することあげることが大事ですね。
スキンケアや腸活を日頃から取り入れ、愛犬を皮膚病から守っていきましょう。
記事監修者
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科目・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。