犬のかゆみ治療にロキベトマブは安全?|ロキベトマブの犬への安全性について獣医師が解説!

犬が体をかいたりなめたりする姿を見るのは、飼い主様にとってつらいものです。
特に犬アトピー性皮膚炎では、かゆみが長く続くため犬の生活の質が下がってしまいます。
ロキベトマブは、そんな犬のかゆみをやわらげる新しい薬として注目されています。
「でも新しい薬って安全なの?」
このような飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
今回はロキベトマブの有効性と安全性、そして減薬のためにおうちでできるケアについてわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬のかゆみ治療の参考にしてみてください。

頬をかいている柴犬

ロキベトマブとは

ロキベトマブは抗体医薬という種類のかゆみ止めの薬です。
簡単に言えば、ロキベトマブはかゆみを起こす原因物質をピンポイントでおさえる薬です。
これによりかゆみの信号が脳へ伝わりにくくなり、犬の皮膚のかゆみが減っていきます。
またロキベトマブはとくに犬アトピー性皮膚炎の犬に有効な薬です。
以下にロキベトマブの主な特徴を説明します。

1回の注射で1ヶ月有効

ロキベトマブは皮下注射で投与する薬で、1回の注射で1ヶ月程度効果が続きます。
このため毎日薬を飲む必要がなく、飼い主さんの負担が少ないことも大きな特徴です。
またロキベトマブは継続投与により治療成功率が上がる傾向があること、投与間隔を少しずつ延ばせる可能性があります。

長期投与でも耐性ができにくい

ロキベトマブは長期投与でも有効性が落ちにくいことも特徴です。
12か月間の長期試験では、ロキベトマブを定期投与した犬の94%で良好な皮膚状態が維持されました。
これはロキベトマブは1年以上の継続使用でも耐性が起きにくいことを示しています。

このようにロキベトマブは利便性と有効性を兼ね備えたかゆみ止めの薬です。
しかしロキベトマブにもデメリットがあります。
ロキベトマブはかゆみを抑える効果はありますが、皮膚の炎症を鎮める効果がやや乏しいのでは?という意見もあります。

このため強い皮膚炎がある場合には、適応を慎重に判断する必要があります。

ロキベトマブの安全性

ロキベトマブは犬のアトピー性皮膚炎に使われる薬の中でも特に安全性が高い薬です。
この薬はかゆみの原因となる物質だけをおさえるため、副作用が少ないといえます。
またロキベトマブの安全性を確かめるために安全性試験が行われています。

まず安全性を考えるときに知っておきたいのは有害事象という言葉です。
有害事象とは、投薬試験中に犬の体に見られた変化のことをいいます。
ただし有害事象は薬のせいで起きたとは限らず、たまたま起きた下痢なども含みます。
このため有害事象=副作用ではないという点を理解しておくことが大切です。

ロキベトマブを142頭の犬に84日間投与した安全性試験で発生した有害事象を説明します。

  • 下痢・嘔吐

  • 耳や皮膚の炎症

  • 元気消失・食欲不振

下痢・嘔吐

下痢・嘔吐はロキベトマブの安全性試験で認められた有害事象です。
下痢は15.5%で、嘔吐は13.4%の犬で発生しています。
いずれも一過性のもので、ロキベトマブ投与との因果関係は証明されませんでした。

耳や皮膚の炎症

耳や皮膚の炎症はロキベトマブの安全性試験で認められた有害事象です。
外耳炎が5.6%、膿皮症と皮膚炎が合わせて12.6%の犬で発生しました。
ただし、犬アトピー性皮膚炎の犬はもともと外耳炎や膿皮症を起こしやすいです。
そのためロキベトマブによって耳や皮膚の炎症が起きたとは考えにくいです。
これらの皮膚炎が起きた犬でも、対症療法によって改善したと報告されています。

元気消失・食欲の低下

元気消失・食欲の低下はロキベトマブの安全性試験で発生した有害事象です。
元気消失は9.9%、食欲の低下は4.9%の犬で発生しました。
いずれも一時的なもので、実際に使用していてもこれらの症状はほとんど経験しません。

このようにロキベトマブは深刻な有害事象が少なく、安全性の高い薬であるといえます。
こちらを向いているフレンチブルドッグ

ロキベトマブを減薬するためにできること

ロキベトマブは安全な薬とはいえ、薬の投与量はなるべく少なくしたいと考える飼い主様も多いでしょう。
ロキベトマブはおうちでのケアによって投与間隔を延長して、減薬できる場合があります。
減薬のためには、以下のようなおうちでできる皮膚ケアが役立ちます。

  • 腸活

  • 栄養素の摂取

  • 保湿

腸活

腸活はロキベトマブの投与間隔を延ばして減薬するうえで有効です。
腸内環境が整うと過剰な免疫反応が抑えられ、犬アトピーの症状が軽減します。
乳酸菌やオリゴ糖を含むサプリメントを続けて与えることが有効です。
腸活は少なくとも3か月以上続けることで効果が得られることが多いです。
腸活についてはこちらにまとめています。

犬の腸活完全攻略ガイド|腸と皮膚の意外な関係とは

オメガ3脂肪酸の摂取

オメガ3脂肪酸の摂取はロキベトマブの減薬のために有効です。
DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸は皮膚の炎症をおさえるはたらきがあります。
これにより犬アトピー性皮膚炎のかゆみが起きにくくなり、ロキベトマブの投与間隔を延ばせる可能性があります。

保湿

保湿はロキベトマブの減薬のために役立ちます。
犬アトピー性皮膚炎の犬は皮膚が乾燥しやすいため、皮膚のバリアが弱いです。
このため日常的に保湿をすると皮膚のバリアが補強され、かゆみが起きにくくなります。
保湿についてはこちらもチェックしてみてください。

犬の保湿ケア|乾燥肌や皮膚病対策にグリセリンは効果的?

まとめ

ロキベトマブは1回の注射で1ヶ月効果が続くかゆみ止めであり、安全性も高いです。
かゆみに苦しむ犬にとって、毎日の投薬から解放されることは生活の質の向上につながるでしょう。
ロキベトマブによる重大な健康上のトラブルは報告されておらず、安心して使うことができます。
また今回ご紹介したおうちでのケアによって、投薬間隔を延ばして減薬することも可能です。

 

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記事監修者

伊従慶太獣医師

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)

麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。