犬アトピー性皮膚炎におけるインナーケアとは|インナーケアの重要性と実践方法
皮膚のかゆみに苦しむ愛犬を見て、心を痛めていらっしゃる飼い主様はいるのではないでしょうか。
特に犬アトピー性皮膚炎は、長期間にわたり皮膚トラブルが続くことが多く、非常に悩ましい問題です。
犬アトピー性皮膚炎では体の外部からのケアだけでなく、体の内側からのアプローチが重要です。
体の内側からのアプローチはインナーケアと呼ばれますね。
今回は犬アトピー性皮膚炎におけるインナーケアについて詳しく解説します。
犬の皮膚トラブルにお悩みの飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚をより健康に保てるようにしましょう。
犬アトピー性皮膚炎とは
犬アトピー性皮膚炎は遺伝的な要因と環境要因が組み合わさって発症する慢性的な皮膚疾患です。
犬アトピー性皮膚炎は、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲンに対して過剰に反応してしまうことが原因になっていることが多いですね。
犬アトピー性皮膚炎の症状は
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顔周り
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脇の下
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お腹
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足先
に出やすい傾向があります。
残念ながら、犬アトピー性皮膚炎は完治が見込める病気ではありません。
犬の生活の質(QOL)を低下させないように生涯にわたって、うまく付き合っていく必要があります。
インナーケアの効果
従来のアトピー性皮膚炎の治療は、ステロイド、分子標的薬、抗体医薬などの薬物療法や、薬用シャンプーを使用したスキンケアが中心でした。
これらの治療法は、皮膚の炎症を抑え、かゆみを和らげる効果がありますが、あくまでも対症療法であるため、根本的な解決にはなりません。
そこで注目されているのが体の内側から皮膚の健康をサポートするインナーケアです。
インナーケアには以下のような効果が期待できます。
免疫機能の調節
皮膚の健康を維持するためには、免疫機能が大切です。
特に犬アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症を起こしやすく、免疫機能も低下することがあります。
インナーケアにより必須脂肪酸やビタミンEなどの成分を摂取することで、皮膚の炎症を抑え、外部刺激に対する抵抗力を高めることができます。
皮膚バリア機能の強化
皮膚バリアは、外部の刺激や病原体から体を守るための第一線の防御機構です。
その機能が損なわれると、犬アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患が悪化する可能性があります。
インナーケアにより皮膚バリアを強化するために有効とされている栄養素を摂取することで皮膚の健康を維持することができます。
例えば、必須脂肪酸などの成分が皮膚のバリア機能を強化してくれます。
腸内環境の改善
腸内環境は体全体の健康に密接に関連しており、特に免疫系と深い関係があります。
インナーケアによりプロバイオティクスやプレバイオティクスを摂取することで腸内環境を整え、善玉菌を増やすことが可能です。
腸内の善玉菌を増やすことで免疫機能を整え、皮膚のアレルギー症状の改善につながります。
抗酸化作用の強化
皮膚の健康において抗酸化作用は細胞のダメージを軽減するために重要です。
紫外線やストレスなどの影響で体内で活性酸素が増えると細胞にダメージを与え、皮膚トラブルが悪化することがあります。
インナーケアで、抗酸化作用の高い栄養素を摂取することで活性酸素の働きを抑制し、皮膚の炎症を抑える効果が期待できます。
抗酸化作用が期待できる成分にはビタミンEなどがありますね。
ターンオーバーの正常化
皮膚は古い細胞が新しい細胞に置き換わることで、皮膚の健康を維持し、外部からの刺激や感染から保護する役割を果たします。
このプロセスをターンオーバーと言い、犬の場合は約21日周期です。
皮膚のターンオーバーが乱れると乾燥などの症状が見られることがあります。
ビタミンAなどの成分をインナーケアとして取り入れることで正常なターンオーバーを維持できます。
インナーケアにはサプリメントを活用しよう
愛犬にインナーケアを取り入れる上でサプリメントは非常に有効な方法です。
ここではインナーケアにサプリメントが効果的な理由と、その選び方を詳しく解説します。
サプリメントの利点
犬が皮膚の健康を保つには特定の栄養素を多く必要とする場合があり、それを食事だけで補うことは難しいことがあります。
また犬は食事のバランスが変わると、お腹の調子を崩してしまうことが多いです。
サプリメントは、こうした栄養素を効果的に補う手段として非常に役立ちます。
サプリメントの選び方
サプリメントを選ぶ際は犬の体質やアレルギーの有無などを考慮して選びましょう。
また、サプリメントにはさまざまな形状があるので、犬が好んで食べる形状を選ぶことで、継続的に摂取しやすくなります。
サプリメントは継続して使用することで効果が得られやすいですね。
サプリメントの選び方がわからない場合は獣医師に相談してみましょう。
まとめ
犬アトピー性皮膚炎の管理には、外部からのケアだけでなく、インナーケアが非常に重要です。
特にサプリメントを活用したインナーケアは、必要な栄養素を効率的に摂取できる優れた方法ですね。
インナーケアは即効性のある治療法ではありません。
インナーケアは継続的な取り組みが必要であり、根気強く続けることで効果を実感できます。
愛犬の生活の質を向上させるために、長期的な視点でケアを行っていきましょう。
記事監修者

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。