秋は犬にとって涼しく快適な季節ですが、実は皮膚のかゆみが増える犬もいます。
「夏が終わったのに、どうして犬のかゆみが強くなるの?」
と疑問に思う飼い主様も多いでしょう。
秋は特有のアレルゲンが増えることや、夏に増えたダニの影響が出始めることがあります。
今回は秋に増えるアレルゲンと犬の皮膚のかゆみについて獣医師が詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、秋に愛犬の体がかゆくなる方は参考にしてみてください。
秋に特有のアレルゲンとは?
秋に特有のアレルゲンは、秋に生える雑草とダニが代表的です。
これらのアレルゲンに反応する犬は、秋になると体がかゆくなります。
それぞれについて解説していきます。
秋に生える雑草
秋に生える雑草は以下のものが挙げられます。
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エノコログサなどのイネ科植物
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ブタクサ
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ヨモギ
いずれも秋になると公園や道路沿いなど様々なところに生える雑草です。
これらの雑草が放出する花粉によって、犬がアレルギー反応を起こします。
とくに散歩のときに花粉が犬の体についたり、犬が花粉を吸い込むことが多いですね。
雑草の花粉は数メートルから数十メートル飛散するため、雑草に触れなくても犬の体に付着することがあります。
またこれらの雑草は自宅の庭に生えていることもあります。
雑草を抜くのは面倒ですが、愛犬と庭でよく遊ぶ場合は定期的に草むしりをすることが大切です。
ダニ
ここでいうダニは、コナヒョウヒダニなどの目に見えない小さなダニのことです。
ダニは梅雨から夏に大量に繁殖しますが、秋になると気温の低下で死んでしまいます。
このためダニの死骸が犬の体に付着することでアレルギーによって体がかゆくなります。
カーペットやクッションなどの布製品にはダニが少なからず存在するため注意が必要です。
また畳やフローリングの隙間などにもダニはいるため、定期的に掃除ができているか確認しましょう。
秋のアレルゲンと犬アトピー性皮膚炎
秋のアレルゲンと犬アトピー性皮膚炎には強い関係があります。
犬アトピー性皮膚炎は環境中のアレルゲンに反応して皮膚にかゆみを起こす病気です。
犬アトピー性皮膚炎の犬は皮膚が弱く、アレルゲンが体に付着するだけで過剰な免疫反応が起きてしまいます。
かゆみが出るのは全身ですが、とくに足先や耳などが多いです。
かゆみのあるところは犬がかいたりなめたりするため、皮膚が赤くなって脱毛してしまいます。
ただ環境中のどのアレルゲンに反応するかは犬によって異なります。
血液検査でのアレルギー検査は一般の動物病院で手軽に実施できますが、その結果は必ずしも完全ではありません。
このため季節によるかゆみの変化を見てその犬にとってのアレルゲンを推測する必要があります。
秋の雑草およびダニアレルギーを疑う場合について以下に解説します。
秋の雑草アレルギー:秋だけかゆみが出る
秋の雑草のアレルギーを疑うのは、秋にだけ犬のかゆみが起こる場合です。
秋以外の季節にかゆみがない場合は、ダニやカビ、樹木の花粉など他のアレルゲンには反応しないと考えられます。
とくに散歩の際は雑草に触れやすいため、かゆみが強くならないかをよく観察しましょう。
ダニアレルギー:秋にかゆみが増す
ダニアレルギーと考える場合は、秋にかゆみが増す場合です。
ダニは年中家の中に存在しますが、秋は夏に増えたダニが大量に死にます。
また秋は空気が乾燥して死んだダニの粒子が室内を舞い、犬の体にも付着しやすいです。
このため1年を通して体をかゆがる中でも、とくに秋にかゆみが強くなる場合はダニのアレルギーを疑います。
秋に増えるアレルゲンにおうちでできる対策
秋に増えるアレルゲンにおうちでできる対策は以下の3つです。
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お散歩時のケア
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自宅の環境の見直し
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腸活
お散歩時のケア
お散歩時のケアは秋のアレルゲンの対策として有効です。
具体的には以下の2つが取り組みやすいです。
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体を濡れタオルで拭く
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雑草の茂った場所に近づかない
お散歩には体に空気中に舞う花粉などのアレルゲンが付着します。
アレルゲンを体につけたままにしていると、アレルギー反応が起きてしまいます。
このためお散歩後には濡れタオルで体を拭いて、アレルゲンを除去することが大切です。
またそもそも花粉を放出する雑草の近くを歩かないようにすることも重要ですね。
自宅の環境の見直し
自宅の環境の見直しは秋のアレルゲン対策において重要です。
ソファや絨毯、愛犬のお気に入りのクッションなどには夏に増えたダニの死骸が潜んでいる可能性があります。
天日干しや洗濯をすることでアレルゲンを除去することが大切です。
ソファやフローリングなどは洗えないため、定期的に拭き掃除をしましょう。
空気清浄機を設置して空気中に舞うダニの死骸を除去することも大切ですね。
また自宅の庭に秋の雑草が生えている場合は、犬が庭で遊ぶときにアレルギー反応が出ていることがあります。
自宅の庭に生えている雑草は早めに抜くことが大切ですね。
腸活
腸活は秋のアレルゲン対策としておすすめです。
腸活は腸内細菌を整えることで、アレルギーを起こしにくい体質づくりに役立ちます。
腸内環境を整えると免疫のバランスが安定し、皮膚のかゆみを軽減できます。
腸活はサプリメントを利用すると効率がいいです。
効果が出るまでには3ヶ月以上は時間がかかるため、じっくり取り組むことが大切です。
腸活についてはこちらにまとめているので参考にしてみてください。
犬の健康を守る腸活のすすめ|腸活に効果的なオリゴ糖とは?
まとめ
犬の秋の皮膚のかゆみは、主に雑草の花粉と夏に増えたダニの死骸が原因です。イネ科植物、ブタクサ、ヨモギなどの雑草は秋に大量に花粉を飛ばし、アトピー体質の犬に強いかゆみをもたらします。
また夏に増えたダニの死骸も、犬にアレルギーを起こさせます。
今回ご紹介したご家庭でできる対策を取り入れて、愛犬が秋を快適に過ごせるようにサポートしてあげてください。

どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。