犬の腸活にココアは危険|ココアの摂取が危険な理由について獣医師が解説
近年、「腸活」という言葉が流行り始め、さまざまな食事から腸活に役立つ成分を摂取されている方が増えてきています。
中でもココアは腸活に良いとされていて、日々の食事に取り入れている方も多いですね。
しかし、犬で同じようにココアを腸活のために与えてしまうと非常に危険です。
今回はなぜココアが犬にとって危険なのか、実際に犬に腸活をするにはどのように行うのかを解説します。ぜひ最後までお読みいただき、正しい腸活の方法を知っていただけると幸いです。
犬の腸活とは
「腸活」とは、食事やサプリメントなどを通じて腸内環境を整えることを指します。
動物の腸内にはさまざまな細菌が存在します。
その細菌たちは、免疫など体の健康を維持するのに非常に重要な存在です。
このような腸内の細菌のことを腸内フローラと呼び、腸内フローラは腸だけでなく体のさまざまな臓器に影響していると言われています。
犬にとっても腸活で腸内フローラを整えることは健康維持に有用です。
例えば、犬のアレルギー性皮膚炎に対する腸活の効果が挙げられます。
犬のアレルギー性皮膚炎は本来有害でない物質に対し、免疫が過剰に反応することにより発症します。
実はアレルギー性皮膚炎の動物では、腸内フローラの乱れにより免疫を調節する腸内細菌が減少するとも考えられています。
犬ではまだ十分にわかっていない部分もありますが、アレルギー性皮膚炎にも、腸活は良い作用をもたらすことが期待されます。
人間では、腸活に良い食材はいくつか知られてきています。しかし犬にも、人間で腸活に良い食材を与えれば良いのかと言われると、そういうわけでもありません。
腸活にはココアが良い?
ココアは人間の腸活によく用いられる食材です。
何となく体に良いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
ココアには体にとって良い影響を与えるさまざまな成分が入っています。
そのうち、腸内環境を整えるための要素は、リグニンという不溶性食物繊維です。
リグニンは、胃酸で溶かされずそのまま腸に届いて、善玉菌のエサとなり腸内の善玉菌の増殖を促進し、悪玉菌の増殖を抑制する作用があります。
このようにココアは、腸の動きが良くなり、便秘が改善するという点で人間の腸活に用いられています。
でも、犬にココアは危険です!
人間の腸活にとって非常に良い効果をもたらすココアは、犬に摂取させるとどうなるでしょうか。
犬にココアを与えると中毒症状を引き起こし、命に関わる場合もあります。
犬のチョコレート中毒は有名ですが、ココアでもチョコレートと同じテオブロミンという成分が含まれているため、犬にとって非常に危険です。
テオブロミンは犬にとって有毒で、摂取すると比較的少量でも中毒を起こすことがあります。
症状は、
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痙攣や発作
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嘔吐下痢
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意識障害
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過剰な興奮
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不整脈
などがあり、重症の場合は亡くなってしまうこともあるので注意が必要です。
犬がココアを食べてしまった場合には、病院で吐かせる処置をしたり、点滴をして全身状態の改善を図ります。
犬で安全に腸活するにはサプリメントを使いましょう
人間の腸活に便利な食材でも、犬にとっては有害ということは珍しくありません。
近年では犬にとっての毒物は、ご家族の知識向上もあり、どのような食材で中毒症状を起こすか詳しく知っている方も増えてきています。
しかし、愛犬で腸活をするときに、どのような食材をどのくらい摂取すればよいか考えるのは大変ですよね。
そんな時に便利なのが犬用のサプリメントです。
サプリメントは、現在与えている食事の栄養バランスに大きな影響を与えることなく十分な栄養を摂取することができます。
ココアのように恐ろしい副作用について悩む必要もないため、気軽に始められるのが特徴ですね。
犬でサプリメントを使用し始めたら、3〜6ヶ月で効果を判定します。
早ければ1ヶ月で変化が現れる事もありますが、時間のかかる犬もいます。
焦らずゆっくり効果判定を行いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
腸活は犬の健康維持にとって非常に有効です。
しかし、実際の生活に取り入れるなら、安全で簡単な方法が良いですよね。
愛犬の健康のために良かれと思って、与えたものが毒物だと犬もご家族もとても苦しい思いをしてしまいます。
そのため、安全性が高く、投与量も決まっているサプリメントを使用するのはとても理にかなっています。
愛犬の腸活に興味のある方はぜひ、サプリメントの活用を検討してみてください。
記事監修者
どうぶつの皮膚科・耳科・アレルギー科主任皮膚科医
伊從 慶太
アジア獣医皮膚科専門医・獣医師・獣医学博士(獣医皮膚病学)
麻布大学を卒業後、岐阜大学連合獣医学研究科にて博士課程を修了。
東京農工大学、ドイツミュンヘン大学およびスウェーデン農業科学大学において小動物および大動物の皮膚科研修を経て、2015年にアジア獣医皮膚科専門医を取得。
現在は、どうぶつの皮膚科・耳科目・アレルギー科で診察を行う傍ら、全国の獣医師に対する教育活動や学会活動、細菌性皮膚疾患、スキンケア分野を中心とした研究活動を行う。